MOUNT KIMBIE『Cold Spring Fault Less Youth』(Warp / Beat)

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 時の流れは本当に早いもので、ドミニク・メイカーとカイ・カンポスによるマウント・キンビーの名盤『Crooks & Lovers』が発表されてから3年近く経つ。3年前の彼らを語る際の捉え方としてもっとも多かったのは、"ブリアル以降のポスト・ダブステップを象徴するユニット"かもしれないが、だとすれば、"ポスト・ダブステップ"という枠組みにおける彼らのことを、異端的に見つめる者もいただろう。


 というのも、彼らはダブステップから離れた場所で音楽を生みだしていたし、そもそもポスト・ダブステップ自体が、音楽性が固定化していくダブステップとは距離をおいていた音楽、いわばダブステップの大波から逃れるためのシェルター的側面があった。ダブステップとポスト・ダブステップは、文脈的には繋がっていても、それぞれが持つベクトルは違うものだといえる。


 言ってしまえば、彼らはもちろんのこと、同じくブリアル以降の存在として注目を集めたジェームズ・ブレイクにとって、"ポスト・ダブステップ"というタグは、多くの人に誤解をあたえる"ありがた迷惑"だったのかもしれない。一要素としてダブステップを取りいれてはいたが、彼らやジェームズ・ブレイクの音楽は、決して"ダブステップそのもの"ではないからだ。事実、ジェームズ・ブレイクは最新作『Overgrown』にて、ベース・ミュージックの要素を減退させ、より"歌"を際立たせるサウンド・プロダクションに至っている。


 そしてマウント・キンビーもまた、本作『Cold Spring Fault Less Youth』において、"歌"を前面に押しだしている。『Crooks & Lovers』をリリースして以降、音楽フェスやライヴハウスで演奏する機会が多くなり、さらにはスタジオ中心の制作環境になったからだろう、本作は明らかにライヴという場を想定した音作りが目立つ。生音の割合が増え、彼らはヴォーカリストとしてその歌声を披露する。甘美なメロディーは、丁寧かつ繊細なアレンジを華麗に纏い、そのアレンジも、ここ最近のJ-POPばりにさまざまな試みがなされている。


 クラウトロック、アンビエント、ジャズ、ヒップホップなどを雑多に混在させた作風からは、彼らがもともと持っていたフットワークの軽さにさらなる磨きがかかっていることを窺わせる。それゆえ、いささか散漫な印象を抱いてしまうのは否めないが、これが音楽を生みだすモチベーションの高まりゆえの結果ならば、前進するための過渡期として受けいれられる。


 また、キング・クルールが参加した「You Took Your Time」「Meter, Pale, Tone」の2曲は、キング・クルールの渋みあふれる歌声を上手く音像に溶けこませるプロダクションの妙が光り、コラボレーションが最良な形で結実したことを知らしめる絶品ポップ・ソングに仕上がっている。3人でアルバム1枚を作ってほしいと思わせるくらいの出来で、この2曲のために本作を手に取るのもアリだと思う。



(近藤真弥)

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