吉田ヨウヘイgroup『FROM NOW ON』(MERITOCARI)

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 私たちは、あらゆる万物に名前を付けて、わかりやすく理解できるものに変化させている。子どもの頃は感覚で捉えていた物事にも、ちゃんと名称があることを成長とともに理解し、まるでパズルのピースをはめるかのように感覚と言葉を合致させてゆく。


 けれども、大人になってからも言葉では説明しがたいものだってある。言葉では説明できないというか、その状況を表すであろう言葉がたくさんありすぎて、どの言葉がしっくりくるのかわからない。"雨"という漢字をひとつとっても、五月に降る雨を"五月雨"といい、夏の夕方に短く降る雨を"夕立"というように、日本人の感性は情緒豊かであるゆえに、はっきりとしない四季の狭間で揺れ動く天気だったり、心の奥底にある実体の見えないうごめく感情だったり、そういう曖昧なものはいつだって言葉にできない。ただ、そういうものはだいたいニュアンスで感じ取っていたり、本能で理解していたりする。


 吉田ヨウヘイgroupは、「ユーレイ」の歌詞にある一節、《静かにすれば感じられるだろ 少し張り詰めた辺りの気配を 椅子が軋む音、微かに増えた湿気 もう少しかな、声は出さないで》を聴くとわかるのだけど、そういう"言葉に出来ないもの"を柔らかい歌い口で丁寧に歌っている。


 ここで指す"言葉にできないもの"というのは、不幸な状況に陥った時に神様を信じるとか、友達から好かれているという見えない信頼とか、将来良いことがあるように祈るなどといった、一種の"信仰心"を「ユーレイ」に例えて歌っているのではないだろうか。


 柔らかい歌い口と先述したが、《大きな借金を背負ってないのとかも》といった、なんだこれは? と、考えさせられる面白い歌詞が所々にあり、さらにはダーティー・プロジェクターズを彷彿させる華やかな女性コーラスに、pre-schoolの再来かと感じさせるキレッキレのギター。そして、タイトル『From Now On(これから)』の由来となった、工藤礼子と工藤冬里のデュオ・アルバムのような、すっと沁み入る歌声に優しく寄り添うピアノ。ポップスとジャズが融合された吉田ヨウヘイgroupのサウンドは、音源もいいのだけど、まもなく開催される企画ライヴで是非体感してほしい。これからの活躍が非常に楽しみだ。



(立原亜矢子)

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