DIIV『Oshin』(Captured Tracks)

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 今年のフジロックでの出演が発表されて、一部では熱狂的な反応を生んでいるというダイヴ。ビーチ・フォッシルズのギタリスト、ザッカリー・コール・スミスのソロ・プロジェクトとして2012年にこのアルバムでデビューを果たしたバンドで、ドラムを叩いているのは元スミス・ウェスタンズのコルビー・ヒューイット。そんな彼らが作り出すサウンドは、ノスタルジックで、ドリーミーで、イノセントで、ただひたすらに気持ち良く浸れるギター・ミュージック。


 わたしがこのバンドに夢中になった理由はその潔さだ。この音楽に野心や複雑さは一切持ち込まれていない(本業のバンドが別にあるのが主な理由かもしれないけれど)。ルート弾きのベースの上でギターの音色が重なる美しい瞬間が、畳み掛けるように襲ってくるだけのアルバム。これをインディーの名盤と言わずして何と言う。


 往々にして、個人に長く愛されるアルバムというのはこういうもの。最近はバンドで飯を食っていこうという考え方も変わってきていて、好きなことをバンドとしてやりながら、お金を稼ぐ仕事を別に持つことが当たり前になってきている。そのやり方もまた、正しい時代なのだ。ビーチ・フォッシルズの活動で十分に生活が成り立っているのかどうかは分からないけれど、ダイヴにはそういうお楽しみゆえの突き詰め方を感じることができる。でも、こういうバンドが長く続くと奇跡が起こるよ。ファースト・アルバムは最初の奇跡になりつつあるから、このあとも続けて、この世界観が進化した先にどんな風景が待ち受けているのか、僕たちに見せてほしい。


 ライヴではすこし早めのテンポで演奏するそうなので、そりゃ苗場では天にも昇る心地がするに違いない。人間の耳に一番心地よく響く音を探求している(?)コールくんのギターを、ぜひ聴いてみてほしい。



(長畑宏明)

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