may.e『Mattiola』(Tanukineiri)

mattiola.jpg

 may.eを名乗る女性シンガーソングライターに出会ったのは、サウンドクラウドを徘徊しているときだった。その出会いはほんと偶然なんだけど、心にスルリと入ってくる歌声(ラップをしている曲も最高!)を聴いた瞬間、見事にやられてしまいました。


 オリジナル楽曲はもちろんのこと、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Stephanie Says」や、マイ・ブラッディー・ヴァレンタインの「When You Sleep」といったカヴァー・ソングにも惹かれた。既存の曲に新たな命を吹きこめる澄んだ歌声は、もっと多くの人に聴かれてほしいと心の底から願っています。


 とはいえ、そんな筆者の願いは本作『Mattiola』をキッカケに叶いそうな気がする。そう思わせるくらいに本作は良盤なのです。


 本作はmay.eにとってのファースト・アルバムにあたるもので、通販で買えるCD盤(現在は申し込みを締め切ったそうです)についてくるmay.e執筆の解説によると、「このアルバムはストーリー仕立て」だそうだ。確かに歌詞を読みすすめていくと、ひとりの女性が抱いた淡い恋心と、それによって生じる苦悩や幸福が鮮明に描写されているのがわかる。届いたCDに同封されていた手紙には、「私の日記のようなもの」と書かれていた。ということは、本作の物語にはmay.eのパーソナルな領域が少なからず反映されているのだろう。それゆえ本作を聴くと、他人の心を覗き見したような気持ちになってしまうのかもしれない。全曲may.eの部屋でレコーディングされ、さらにはiPhoneまで持ちだした宅録環境もそれを助長する。


 音楽的には、リヴァーブを多用したドリーミーなアシッド・フォークだ。ビーチ・ハウスに通じるモダンなドリーム・ポップの要素を感じさせながらも、ティム・バックリィやHarumi(そういえば、Harumiのアルバム『Harumi』をプロデュースしたトム・ウィルソンは、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのプロデュースもしている)などがちらつく、いわゆる60年代末から70年代の雰囲気を醸しだしている。このあたりの折衷的センスは今っぼいと思う。


 それから筆者の耳がおかしいと言われることを承知で言えば、本作を聴いて想起した作品のひとつに、トッド・ラングレンの『Runt』がある。1970年にリリースされた『Runt』は、1曲目の「Broke Down And Busted」が耳に入ると、聴き手と作品の距離が一気に縮まる不思議な親密感を持っているが、この親密感が本作にも存在する。音楽性はまったく違うけれど、だからこそ筆者は、本作と『Runt』をダブらせてしまったのかもしれない。



(近藤真弥)




【編集部注】『Mattiola』は《Tanukineiri》のサイトからダウンロードできます。

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: may.e『Mattiola』(Tanukineiri)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/3553