CORKY "TRAXMAN" STRONG「K Town Born / Holy City Raised」(Halsted Street)

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 2012年10月には代官山ユニットで来日公演を実現し、日本でもジューク・レジェンドとして認知されているトラックスマンのEPが本作である。しかし本作はジュークだけでなく、コーキー・ストロング名義で作られたハウス・トラックも収められている。ジューク・ファンの間では、すでに高い評価を得ているトラックスマンのハウス・トラックだが、本作はその魅力を存分に味わえるEPだ。


 本作に収められた曲群のなかでは、「Marvin vs Strong」「Zulu Dance」「Wave」「Bra Bra Down」がハウス・トラックとなっている。シカゴ育ちのトラックスマンだし、シカゴ・ハウス特有のラフなプロダクションが前面に出ているのだろうと思うかもしれないが、意外や意外(といったら失礼か?)、オシャレな色気が漂うポップなハウスを作りあげている。もちろんシカゴらしいラフな質感もあるが、特にマーヴィン・ゲイの「Got To Give It Up Pt. I」をネタにした「Marvin vs Strong」は一際キャッチーなハウスであり、女子高生がiPodに入れていてもおかしくないトラックだ。それに「Wave」は、デヴィッド・モラレスのDJミックスで使われそうなニューヨーク・ハウスに仕上がっている。


 とはいえ、先述の来日公演ではナイトクローラーズの「Push The Feeling On」や、リズム・イズ・リズムの「Strings Of Life」をプレイしていたセンスからもわかるように、トラックスマンはサービス精神旺盛である。そんなトラックスマンの一面を知っていれば、本作の音楽性は素直に受けいれられるものだろう。


 本作ではそんなサービス精神が随所で発揮されており、そこが面白いところでもある。先程の「Marvin vs Strong」もそうだが、ジャジーなジュークの「Tha Good Beat」では、ディー・ライトの「Good Beat」という大ネタを使用している。また、タイトルで興味深いと思ったのは、「Your Computer Is Infected」。これ実は、パソコンがスパイウェアに感染したときのフェイク・アラートのひとつ。こうすることで製品を買わせる、いわば脅しの一種だが、もしかしてトラックスマンは、この脅しに引っかかったことがあるのだろうか? まあ、それはともかく、曲自体はヴォイス・サンプルの連呼とランダムなスネアが入り乱れるものとなっていて、ディープな雰囲気を醸しだしている。本作におけるジューク・トラックのなかでは一番好きな曲だ。



(近藤真弥)


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