KINGDOM『VIP Edition』(Fade To Mind)

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 まずはジャケットに目を向けてほしい。まあ、ほとんどの人はクエスチョン・マークを浮かべるかもしれないが、こうしたセンスは、グライムスDSTVVといったポスト・インターネット世代に共通するものだ。ポスト・インターネット世代についてはグライムス『Visions』のレヴューでも書いているが、簡単に言えばポスト・インターネット世代とは、過去/現在/未来、果ては様々なジャンルやカテゴリーを自由に行き来しながら情報を集め、それらを自分なりの文脈で解釈し表現する者達、ということになるだろうか。


 だとすれば、本作のジャケットはポスト・インターネット世代の感性を見事なまでに反映させている。CDJ、スニーカーなどがごちゃ混ぜになったデザインは、容量オーバーのハードディスクが耐えきれなくなり、爆発したようではないか。しかし、その爆発によって多彩な音楽性を伴った本作が生まれた、と解釈できなくもない。そして、「ごちゃ混ぜ」という点では、1997年にコールド・カットがリリースした『Let Us Play !』に通じると思う(ジャケットの感じもなんとなく似ている)。『Let Us Play !』のアートワークにはCGが用いられているし、強引を承知で言えば、コールド・カットの片割れマット・ブラックは、元コンピューター・プログラマーだ。つまり、コンピューターとインターネット。ポスト・インターネット世代の感性にルーツがあるとすれば、コールド・カットはそのルーツのひとつではないか?


 本作はキングダムの未発表曲や、ミックス・テープ・オンリーだった音源などをまとめたレア・トラック集だが、収録されているのは興味深いトラックばかり。ヒップホップやR&Bの要素を取りいれた強烈なベース・チューンもあれば、秀逸なミニマリズムが光る曲もあり、キングダムの巧みな音作りを知るには最適なアルバムだ。さらにはアッシャーの「Appetite」、シアラの「Goodies」といった大ネタを使ったトラックまである。こうした躊躇のなさが、好奇心が肥大しやすいポスト・インターネット世代の面白さだ。



(近藤真弥)

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