ねごと『5』(Ki/oon)

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 ここ最近のねごとは一気に大人びた印象をあたえるが、そんな彼女達の成長から生じる余裕を『5』は醸しだしている。前作の『ex.Negoto』は、ファースト・フル・アルバムということもあり、疾走感と前のめりなグルーヴが印象的だった。しかし本作は、精密とも言えるバンド・アンサンブルが目立つアルバムだ。


 「sharp ♯」「Re:myend!」などの既発曲には前作と地続きの側面もあるが、その他の曲群は、展開、音色、リズムといった細かい所にまで気を配ったものが多く、本作に至るまでの間に吸収したであろう技術が反映されている。アルバム全体を通してトリッキーなアレンジが施されており、聴き手を飽きさせないサービス精神は前作以上。さらには90年代USインディー・ロックを彷彿させる「メイドミー...」のような曲もあり、そのヴァラエティー豊かな内容は、ウェルメイドなポップ・アルバムとしてよくできている。しかし、こうした奔放さが、本作においては仇になっているように見えなくもない。


 例えば、本作には「たしかなうた」というロック・バラードが収録されている。これまでのねごとからすると、少し毛色が異なる「たしかなうた」は、ライヴハウスよりもスタジアムが似合いそうなスケールを感じさせ、ねごとの新たな側面を開拓しようとする4人の意図も窺えるが、正直、迫力不足なのは否めない。タイプとしては、オアシスの大名曲「Don't Look Back In Anger」系のアンセム・ソングに入るが、こういうタイプの曲は、送り手側がある程度の経験を積んでいないと、強い説得力を宿すのは難しい。


 ねごとは元々、メンバー全員の豊穣な音楽的背景が自然と反映されている曲を作ってきたし、それが他のバンドとは違う個性としてひとつの武器になっていた。だからこそ、本作ではその武器に磨きをかけることで、ねごとの音楽性を確固たるものにする選択肢を選んでもよかったのではないか? もちろんこの先、ねごとが順調にキャリアを積み重ねていけば、「たしかなうた」は強い説得力を持つアンセムになりえる。しかし、現時点ではその説得力が足りないように思えるし、そんな「たしかなうた」を本作に収めたことで、無理に背伸びしている印象を聴き手に抱かせてしまうと思う。



(近藤真弥)

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