SATANICPORNOCULTSHOP『AtoZ!!!!!AlphabetBusterS!!!!!』(neji / nunulaxnulan)

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 長い活動歴を持つサタニックポルノカルトショップだが(以下サタポ)、2011年から突如ジューク/フットワークに傾倒して以降はジュークを量産し、ここ約2年間でEPを7枚、アルバムを2枚リリースしている。そのEP/アルバム群からチョイスしたトラックを集めた2枚組ベスト・アルバムが、本作『AtoZ!!!!!AlphabetBusterS!!!!!』である。


 ジューク/フットワークに傾倒してからの音楽性は、正直一言で表すのは難しい。例えば、同じくジュークが盛りあがっているイギリスの場合、"一要素"としてパーツ的に取りいれたり、ジェームズ・ブレイクのようにエクスペリメントな視点から解釈を試みようとするのがほとんどで、シカゴ産ジュークにあるボディリーな快楽性や土着的要素はかなり薄いと言える。それに比べると日本のジュークは、よりシカゴに忠実というか、シカゴ産ジュークが持つ快楽性を抽出し、それを独自解釈したものが多い。エイフェックス・ツインも泣いて逃げだすであろうハチャメチャなビート、一度聴いたら耳にこびりつく強烈なベースやシンセが特徴的なサタポのジュークも、シカゴ産ジュークの快楽性を"独自解釈したもの"だと思う。


 そしてサタポは、独自解釈の過程で様々な音楽的要素を吸収し、それらをぶっ飛んだセンスで見事に切り刻んでいるが、このセンスに皮肉のようなものを感じとってしまうのは深読みがすぎるだろうか。80年代エレ・ポップ、UKガラージ、オールド・スクール・エレクトロ、ヒップホップ、ハウス、ダブステップなど、その"音楽的要素"はいくらでも指摘できるが、そうした批評家の当てっこ合戦をあざ笑うかのように、サタポは溶解的ジュークを鳴らしている。その溶解は"言われてみればそうかもしれない"というレベルにまで達しており、それは論理に白旗を振らせると同時に、"面白ければそれでいい"という究極の快楽主義に聴き手を導いてくれる。言ってしまえばサタポは、"面白いかそうじゃないか"という単純明快な志向を極め、それをエンターテイメントに昇華しているのだ。


 サタポのジュークは、デカイ音で聴いてなんぼのフロア仕様なのは間違いないのだけど、音楽で遊ぶことの面白さを教えてくれるものでもある。だからサタポのジュークは、ジュークを追いかけている者はもちろんのこと、ジュークを知らない者でも"楽しい音楽"として聴ける。そんなトラックが44曲も詰まった本作は、日本のジューク・シーンが実らせた素晴らしい成果のひとつである。



(近藤真弥)

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