JACK DICE「Block Motel」(Modern Love)

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 最近はダブステップもメジャーになってしまい、ディープなトラックが減ってしまったという言説をたまに見かけるんだけど、メジャーになるのはそんなにいけないことなんでしょうか? ダブステップに限らず、アンダーグラウンドで人気を集めたものがメジャーになった途端つまらないものになるなんてこと、ないと思いますよ。例えばヒップホップやロックを見渡しても、確かに水増ししただけの作品がないわけではないが、それでもディープな面白い音は数多く生まれているし、これらが評価される場もある。


 まあ、いつの時代も、一部のマニアは文化の発展を妨げるというある種のクリシェなんだろうか。"売れること自体が悪"みたいなね。過去と現在の距離が縮まり、それによって十人十色なルーツが生まれ、さらにはこうした状況を楽しめる寛容性を備えた者が増えているのだから、何も"排除"することはなかろうと思う次第です。ダブステップ自体、その寛容性を祝福するように様々な音楽的要素を取りこみ、ブロステップやファンキーといった分派を生みだした音楽だし。もちろん好き嫌いはあってもいいですけどね。


 というわけで、本作はダブステップの新たな側面を開拓する可能性を秘めたユニット、ジャック・ダイスのファースト・シングルである。ジャック・ダイスは、バーミンガムを拠点とするレーベル《Type》の主宰ジョン・トウェルズと、クラウド・ラップ・シーンの注目株メイン・アトラクションズのマネージャーを務めるウォークマスター・フレックスによるユニット。


 ジョンのベース志向が反映されたダブステップを土台に、フレックスが持つヒップホップの要素(特にサウス・ヒップホップ)が交わり、そこにミニマル・テクノやインダストリアル(これはここ最近の《Modern Love》が強く打ちだしている要素だ)がドロドロと流れこむような音響空間は、聴き手を時間という概念から解放するトリッピーな空気で満たされている。何度も聴いているうちに、アクトレス『R.I.P』やアンディー・ストット『Luxury Problems』を想起したんだけど、これらのアルバムよりもジャック・ダイスの音は乾いていて、とてもヒンヤリとした質感がある。この乾いた音には、パレ・シャンブルグに代表されるノイエ・ドイチェ・ヴェレと接続できるものがあり、そういった意味で本作はポスト・パンク的解釈のもと鳴らされたダブステップと言えなくもない。


 特にオススメしたいのは、「Mister Frosty」だ。コールドな音粒が生みだす地を這うようなグルーヴと、時折挟まれるあえぎ声のようなヴォイス・サンプリングが交配しながら進んでいく展開は、死と隣りあわせの妖艶な雰囲気を醸しだしている。これは文字通り、"ヤバいブツ"である。



(近藤真弥)

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