MANIC STREET PREACHERS『Generation Terrorists 20th Anniverasary Edition(初回限定盤)』(Sony)

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 2004年にリリースされた『The Holy Bible』の10周年スペシャル・エディションに長文を寄稿したキース・キャメロンは、その長文のなかではっきりとこう書いている。


 「私にとってマニックスは、世界中でもっとも偉大なロックンロール・バンドでも、私とは折りが合わない虫の好かないロックンロール・バンドでもない」


 そして本作、『Generation Terrorists 20th Anniverasary Edition』に、これまた長文を寄稿したサイモン・プライス。彼はウェールズ出身のジャーナリストで、マニック・ストリート・プリーチャーズに関するバイオグラフィー『Everything : A Book About Manic Street Preachers』の著者だが、その彼ですら、『Generation Terrorists』については「博物館に収蔵されるに相応しい作品でもない」と述べている。しかし両者とも、マニックスに対する情熱と好奇心はとてつもないものがあり、それはふたりの文章からも伝わってくる。そう、マニックスは、聴き手を"シニカルの箱庭"から連れだすバンド、つまり、安易な共感や馴れあいを拒絶する者たちなのだ。この姿勢をマニックスは今でも保ちつづけ、多くのファンは、そんなマニックスを愛している。


 オリジナルに最新リマスターを施したCD1、そのオリジナルのデモが収録されたCD2、そしてジェームズ、ニッキー、ショーンのメンバー3人だけでなく、彼らの関係者も貴重な証言を寄せているドキュメンタリー『Culture, Alienation, Boredom And Despair - A Film About "Generation Terrorists"』などを収めた映像集のDVDで構成される本作は、マニックスが愛される理由と本質を明確に示すものになった。特に『Culture, Alienation, Boredom And Despair - A Film About "Generation Terrorists"』は、目から鱗の新しい発見がたくさんあり、制作時の心境や状況、レコーディング秘話などから見えてくる様々な側面は、マニックスを再考察するための刺激で満ちあふれている。


 それは、かつてマニックスが口にした有名な宣言、「30曲入りの2枚組アルバムを1枚だけ作り、それを世界中でNo.1にして俺達は解散する。」「上手くいかなかったらその時も解散だ。」というハッタリ(彼らが今も第一線で活躍していることからもそれは明らか)すらも、マニックスの行動パターンを読み解く言葉として咀嚼しようと試みた者がいたからだし、マニックスがバンド生命を現在まで維持してこれたのも、そうした者たちの支えによるところが大きいのではないか。まあ、それ以外の者たちは、ギターの腕前が一向に上達しないギタリストをセヴァーン橋(イングランドとウェールズの境を流れるセヴァーン川に架かる橋。自殺の名所として知られている)に導いたことで鬱憤を晴らせたのかもしれないが・・・。


 とはいえ、様々な挫折や矛盾を抱えてもマニックスの輝きが失われることはなく、そしてその輝きの礎となる要素は、『Generation Terrorists』の時点で形作られている。ジェージ・オーウェル、カミュ、ウィリアム・バロウズなどの言葉を引用し、スローガンが書かれたシャツを戦闘服の如く身にまとう攻撃性はもちろんのこと、ビーチ・ボーイズやディスコを取りいれた『Know Your Enemy』で見られる折衷的センスは、パンク、ハード・ロック、バラード、さらにはヒップホップにまで手を伸ばした本作でも見られる。


 変化を恐れず、向上心を持って活動してきたマニックスは決してスマートではないが、泥臭くとも、聴き手の心を揺さぶりつづけてきた。だからこそ彼らは、常にコミュニケーションを求めてきたし、そのためならばリスクも厭わなかった。そのせいで批判を受け、結果的にリッチー・エドワーズという犠牲を払うことになってしまったが、それでもマニックスの音楽には、目の前の日常と向きあう際のヒントがたくさんある。そして、日常の元となる社会から距離を置く者が多くなった現状では、そのヒントが重要な意味を帯びている。


 そういえばリッチーは、テレビ番組のインタビューでこんなことを言っていた。


 「昔良かったから今も良くなくちゃいけないという考えは間違ってるよ。むしろザ・スミスのように、いかに自分達の文化がダメになっているかを歌う方が正しいんじゃないかな。世の中が変わっていくことを受けとめなくちゃダメさ」


 本当にその通りだと思う。




(近藤真弥)

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