FALTY DL『Hardcourage』(Ninja Tune / Beat)

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 《Not Not Fun》や姉妹レーベルの《100% Silk》などが中心となって、去年爆発的な広がりを見せたインディー・ダンスだが、筆者もその爆発に引きこまれたひとりだ。インディー・ダンスの何が面白かったのかを振り返ってみると、様々な音楽を解体し再構築することで、新たな文脈/歴史を築こうとする熱意みたいなものを感じたからだと思う。


 90年代初頭のハウス・ミュージックとバレアリックな熱狂を纏い、アマンダ・ブラウンやアイタルといった、元々ダンスフロアとは程遠い音楽を鳴らしていた者が中心にいたのも面白かった。インディー側のダンスでも、ダンス側のインディーでもない、あらゆる要素がそれぞれの定義を曖昧にしながら交わっていくインディー・ダンスという音楽は、90年代から布石が打たれ、その後のネット文化によって加速された"過去/現在" "古い/新しい"といった価値観の無効化を決定づけるトドメを祝福的に鳴らしていたし、こうした状況を肯定する者は、インディー・ダンスに寄り添うような音楽性を機微ながらも滲ませていた。


 その機微が本作にもある。本作は、フォルティーDLことドリュー・ラストマンによる《Ninja Tune》移籍後初のアルバムで、UKガラージ、ダブステップ、ハウスといった音楽を再解釈し、それらを有機的に混ぜあわせていた従来の感覚を深化させた内容となっている。初期IDMを彷彿とさせるサウンドスケープのなかを、力強いビートが突き進む「Stay I'm Changed」は、ドリューが新たなフェーズに突入したことを告げるに十分なオープニング・トラックであり、続く「She Sleeps」も、耽美なグルーヴが心地よい陶酔感を生みだしていて、ドリューの新たな側面が窺える。


 「She Sleeps」ではフレンドリー・ファイアーズのエド・マクファーレンをゲストに迎えているが、フレンドリー・ファイアーズといえば、《Ramp》などからリリースを重ねるステイ・ポジティヴとたびたび共演していて、そういう意味では《Ramp》周辺と言えなくもないのだけど、ドリューも実は《Ramp》からリリースをしている。偶然とはいえ、ドリューとエドのコラボレーションに《Ramp》という共通点を見いだせるのは面白い。《Ramp》はベース/ビート・ミュージックを語るうえで欠かせないレーベルだが、その点で本作は、これまでの様々な潮流が集う作品でもある。


 さらにはアンディー・ストットゲリー・リードと共振するインダストリアルな質感を取りいれるなど、トレンド・セッターとしての審美眼も発揮している。とはいえ、流行の音楽的要素をただ寄せあつめたのではなく、それらをアルバムという表現フォーマットに上手く落としこんでいるのはさすが。そして、溶解的音楽が展開されている本作は、トレンドだけでなく、これからの音楽の在り方も示している。



(近藤真弥)

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