tricot「バキューンEP」(Bakuretsu Records)

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 「小学生と宇宙」から約7ヶ月ぶりとなる「バキューンEP」は、「ゆとり世代の成長期」というキャッチコピーが本当に的確な、tricotの進化を刻んだ作品になった思う。


 よく言われるマス・ロック的バンド・アンサンブルはさらに磨きがかかり、より豊かな感情表現を獲得した中島イッキュウのヴォーカルは、陰を帯びた色気すら滲ませている。


 バントとしての演奏力もレベルアップを果たしており、疾走感あふれるグルーヴが暴走することもあった従来と比べれば、そのグルーヴを自分たちの好きなように乗りこなせるだけのスキルを身につけつつあることが伝わってくる。それゆえ、手数が多いkomaki♂のドラムも"グルーヴの一部"としてより溶けこんだ印象を抱かせる。個々の演奏力は高いものがあっただけに、それをバントという形にどれだけ還元できるかがtricotの成長に大きく関わると思っていたが、本作を聴く限りでは、そんな筆者の憂いは無用になったようだ。


 しかし、なによりも驚くのは、本作におけるtricotの姿が"底"ではないということ。むしろ本作を聴くことで、かすかに見えていた"底"が見えなくなったしまった。発展途上であるのは確かだけど、その成長曲線はどこまで右肩上がりを描きつづけるのか? それを考えると、興奮すると同時にある種の恐ろしさすら抱いてしまう。



(近藤真弥)

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