TIGA『Non Stop』(Different)

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 どこまでもナンセンス。ずっと聴いているとバカになるんじゃないかと思わせる究極の快楽主義。つまり最高。ヴィタリックやフェイク・ブラッドでおなじみのレーベル《Different》からリリースされたティガによる久々のDJミックス『Non Stop』は、そう言いたくなるくらいごきげんな作品で、聴き手をとことん踊らせてくれる。


 ティガといえば、その端整なルックスとスタイリッシュなアートワークなどから、"エレクトロ界の貴公子"なる異名をあたえられた男だが、確かにティガはかなりのイケメンで、『Sexor』や『Ciao!』といった自身のオリジナル・アルバムも、腰を振りたくなるような色気と妖艶な雰囲気を醸しだしている。しかも驚いたことに、それはデビュー当初から変わらず保ちつづけているものなのだ。リリースを重ねるごとにポップ・ソング志向が目立つようになったとはいえ、基本的にティガは聴き手を踊らせることしか考えていないし、言ってしまえば、それしかやってこなかった。


 それでも主宰するレーベル《Turbo》が順調に評価を高め、自身もジ・エックスエックスやデペッシュ・モードの楽曲をリミックスする"売れっ子"になりえたのは、"ただ踊らせること"を追求し、それをある種の哲学にまで昇華してみせたから。それゆえティガは、現在の立ち位置を獲得できたのだ。


 本作はそんなティガの哲学が遺憾なく発揮されている。哲学といっても小難しいものではなく、先述したように"ただ踊らせること"がティガの目的である。AFXからパンダ・ベア、さらには自身の曲も使用して構築されたミックスは、アシッディーかつミニマルなグルーヴを終始貫いており、110BPM前後から始まって、最終的には126BPMにまでもっていく展開もさすがの一言。完全フロア仕様のトラックを使いつつも、カインドネスやファクトリー・フロアといった昨今のインディー・ダンスを意識した選曲には、時代を読みとる優れた審美眼が表れている。


 とはいえ、クラッシュ・コース・イン・サイエンスを選ぶあたりには、DJヘルと同様にニュー・ウェイヴから多大な影響を受けているティガのルーツを垣間見ることができるし、そこが本作の面白いところでもある。インディー・ダンスに接近しながらも、結局は"ニュー・ウェイヴ好きなオタク"という本質があらわになっているのは、なんとも愛らしい。



(近藤真弥)

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