THE 1975「Sex」(Dirty Hit)

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 "彼らはピストルを手にとらなかった。セックスだけで十分だからである。"と、セックス・ピストルズ好きの中年音楽ライターならそう書くかもしれない。


 マンチェスター出身の4人組バンド、ザ・1975のセカンドEPのタイトル、その名もズバリ「Sex」。あまりにもストレートだ。正直クールとは言えないし、カッコよくもない。しかし、がむしゃらに音を鳴らしている彼らの姿には、惹きつけられるものがある。


 本作に収録された「Sex」のMVを見てもらえれば、その魅力の一端に触れることができると思う。マイケル・ジャクソン、トーキング・ヘッズ、ブラーといった数多くのポスターが壁一面に貼られた部屋で、懸命に楽器を鳴らし、歌う4人の姿が映っている。だが、そんな4人の姿はというと、ちょっとダサい。マンチェスターの街を歩いていそうな普通のあんちゃんそのもの。さらにヴォーカルの髪型は中途半端なスクリレックスみたいだし、陰険かつ嫌みな性格の者にとっては恰好の的、ツッコミどころ満載だ。


 とはいえ、音のほうは本当に素晴らしく、音楽的豊穣さもある。先行で公開された「Sex」は疾走感あふれるロック・ナンバーとなっていて、伸びのあるヴォーカルとイギリスのバンドらしいカッティングを見せる激しいギターがドライヴ感を生みだしている。歌詞のほうはいささか青臭い言葉で綴られているが、それが味となっているのも魅力のひとつだ。


 「Sex」だけを聴けば、勢い重視の退屈なバンドと思えなくもないけど、他の3曲がこれまたなかなかの出来で、引きだしの多さを窺わせる良曲ぞろい。「Intro/Set3」のビートにはダブステップ以降の感覚があり、「Sex」を作ったバンドによる曲だとはとても思えない。エジプシャン・ヒップホップやドラッグスなど、近年のマンチェスターには高いクロスオーヴァー性を持った新進気鋭が次々と現れているが、ザ・1975もそれに続くバンドだということだろう。


 「Undo」はロマンティックなメロディーとスウィートな歌声が交わるR&B風の曲だし、「You」は80年代のUKインディー・ロックを匂わせるなど、その音楽性はヴァラエティー豊か。インダストリアルやエレクトロニック・ボディー・ミュージックの幻影がちらついていた前作「Facedown EP」と比べれば、サウンド面での実験は若干後退しているが、聴き手を驚かせるためのインパクトは十分にある。このバンド、逸材かもしれない。



(近藤真弥)


【編集部注】「Sex」はiTunesで販売されています。

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