SEAPONY『Falling』(Hardly Art / Vinyl Junkie)

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 とりあえず、ジャケットがずるいですよね。ガールズ・ポップ好きにはたまらないというか。条件反射的にレジに持って行ってしまったリスナーも多いのでは。タワーレコードの試聴機にこのアルバムが並んでいたけど、それだけで映えて見えた。皮肉ではなくて、女性ファッション誌に載っていても全然おかしくない。


 この、シアトルの男女3人組バンド、シーポニーのセカンド・アルバムとなる本作『Falling』の音の方はというと、淡い昏睡に導かれるような文字通りのドリーム・ポップ。夢見心地とはこのことだろう。思わず目をつむって音に浸りたくなる。でも、ギターがシンプルではあるものの印象的なフレーズを次々と繰り出し、シューゲイザーを思わせるノイズと相まってしっかり聴かせる。どこかアメリカ南部音楽の要素を匂わせ、フックもきめる。


 先にシューゲイザーと記したけれど、シーポニーのそれはヴィヴィアン・ガールズに通じるギター・ノイズで、中々硬派なところがあり、グランジの香りさえ、ほんのわずかに漂わせているからエスプリが効いている。ベスト・コーストやベル・アンド・セバスチャンを思わせるところもあり、安心して聴けるサウンドだ。


 でも、それらは前作『Go With Me』にもあった。音楽性を音響に求めたバンドにとって大きな変化は難しいとは思うが、僕としてはもっと聴き手に傷跡を残すほどの凄みが欲しかったというのが本音ではある。言ってしまえば、僕も含めて「ジャケットに惹かれた男たちを裏切ってくれ!」というか。「ドリーム・ポップでも悪夢すら見せてくれよ!」というか。グランジの感覚があるシーポニーにはそれができると思う。それこそレディオヘッドやプライマル・スクリームほどの変貌を期待してしまう。聴いていてもジャケットにあるように彼女の顔が見えてこないのは少しもどかしい。


 ただ、それを差し引いても、本作は出来が良い。良作だと思うし、前作と同じ路線を求めていたリスナーも多いと思う。日常を彩るサウンド・トラックとして最適だ。ぽっかり空いた時間を埋めてくれる。しかしサウンド構築が素晴らしいがゆえに、もっと出来るのではないか。アトラス・サウンドのような方向に行けるだろうし、マイス・パレードのような方向にも行けるだろう。アシッド・フォークのような10曲目「Fall Apart」が抜群に良く、それゆえ思い切ってアコースティックな音楽に移行してみてもかなり映えると思う。僕は笑顔でぐしゃぐしゃになったシーポニーを聴いてみたい。このバンドには、それができる力があるのだから。



(田中喬史)

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