GREAT3『GREAT3』(EMI)

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 再結成という言葉は彼らには相応しくなく、再始動というべき、実に9年振りのセルフ・タイトルたる紛れもない、GREAT3の新作。片寄明人氏が語るように、04年以降に活動を停めていた中、多くの近しい人たちを亡くし、震災を経て、そこで、GREAT3をやっていない自身の後悔を深く考えたゆえ、覚悟として再び始めていこうという経緯―。ここには原初メンバーの高桑圭氏は居ないが、白根賢一氏、更には新しい「3」になった、現在、22歳というjanが正式に加入し、瑞々しさと衝動と独特の洗練したセンスが貫かれ、新しく彼らが始まってゆく予感に満ちている。本作にも2曲とも収められている先行配信シングルの「Emotion/レイディ」の段階では、まさかここまでの作品を作り上げてくるとは個人的に想像できなかった。それくらいマジカルなエネルギーと多彩性に溢れた内容になっている。


 冒頭の1曲目、グル―ヴィーでアグレッシヴなロック・チューン「TAXI」から片寄氏とサポートの長田進氏のヒリヒリしたエレキ・ギターが鳴らされ、白根氏のドラムが逞しく響き、janのベースが暴れ、そこに彼ら一流のリリシズムが忍ばされ、片寄氏のあの艶美な声とともに毅然と《100人いれば / 現実だって / 100通りある / どれを選ぶ / 何を感じる / それは自由なんだ》と歌う。1分50秒を越えてからのバンドの組織体としてみせるブルータルなサウンドのうねりは本当にカオティックで麗しい。


 また、これまでの彼らの要素でも欠かせないタームであるセクシュアルな香りに包まれた5曲目の「睫毛」での蠱惑性も映える。反復から、ふとなまめかしく差異へ向かう中、存分に片寄氏のファルセット・ヴォイスが堪能できながら、《あなたの涙にそっと / キスして/ 哀しみから / 連れ出してあげるよ / 人差し指の爪で / なぞった / 睫毛》のライン。ここには、旧来のファンもグッとくると思う。


 新メンバーのjanも既に、この作品内では大きな存在感を刻んでいる。彼の作詞・作曲、ボーカルによる、ニック・ドレイクのような翳りを帯びたフォーキーな7曲目の「Santa Fe」での見せるディーセントな掠れ。《なんて優しいんだこんな道化に 月の下いますぐ殺せばいいのに》、《憂鬱なボヘミアン》、《愛しいな 美しいな》のフレーズ群が結われ、果敢無くも清冽に空気を変える。勿論、白根氏のドラミングも自在さを示し、8曲目のアヴァンギャルドさが最高な「極限高地の蛇」でのボーカルなど、各メンバーの色も存分に顕れ、各曲でコーラス、アンサンブル含め、重なり合う。


 個人的に、今作における一気呵成に思えるヒリヒリしたロック・サウンドの背後に、フェラ・クティ、コンゴトロニクス、トーキング・ヘッズ、ヴァンパイア・ウィークエンドなどの影、さらには、昨今のクラウド・ナッシングス辺りの現代のオルタナティヴなロック・サウンドとの共振、電子音とダイナミックなロックのエクレクティズムにはLCDサウンドシステムラプチャーなどの一部作品との温度を感じ、現代性と同期する瞬間も多く受けた。ただ、これまでの彼らの作品を聴いてきても思うように、芳醇な音楽語彙群に裏付けられていても、誰にも届く「ように」、提示されているのは流石だといえる。


 個人的な感慨にもなるが、それでも、9年振りという歳月を否応なく感じた部分もあるのは否めない。やはり、先行で公開されたPVとともに話題になった今作のクライマックスともいえるかもしれない10曲目の「彼岸」には、胸が軋んだ。アルバムの中でも比較的、シンプルな意匠のまさに彼岸のラブソング。高揚してゆくメロディー、悼み、痛み、命、涙、死、祈り、そして、愛的な何か、多くの意味を噛みしめるような片寄氏の歌詞と熱を帯びる歌唱、それを白根氏のドラム、janのベースが堅実に支え、長田進氏のエレクトリック・ギター、堀江博久氏のピアノも絶妙に色味を加える。この「彼岸」を聴き、ブックレットのSpecial Thanksに並ぶ、志村正彦氏、レイ・ハラカミ氏などのもう「此岸」にはいない人たちの名前を見ると、より想いが膨らむ。


 かねてからGREAT3を知っていたファンだけではなく、ここで初めてGREAT3を知る人にとっても、十二分に獰猛さと美しさが拮抗した作品であるのが嬉しく、全く守りの姿勢がないのは素晴らしい。また、彼らが始まってゆくという号砲とともに、次へ進める、そんな真摯さに背中を押される。


《誰かのために / 自分を捨てて / 愛したい / 諦めず / 命燃やそう》(「彼岸」)



(松浦達)

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