YOUNG SMOKE『Space Zone』(Planet Mu)

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 すごく奔放な作品だ。何度聴いても失われないフリーキーなアトモスフィアとグルーヴ。ジューク/フットワークを基調としながらも、その音楽性はIDM、さらには《UR》周辺のシリアスなテクノも射程に捉える、すごく多様的なものである。


 昨年『Flight Muzik』をリリースしたDJダイアモンド率いる《フライト・ミュージック》に所属するヤング・スモークは、ジューク/フットワーク界で大きな注目を浴びる若手のアーティストだ。


 そんな彼が《Planet Mu》からリリースしたのが『Space Zone』。《Planet Mu》といえば、今年4月にトラックスマン『Da Mind Of Traxman』という名盤をリリースしているが、トラックスマンがシカゴ・アンダーグラウンド・ミュージックの歴史に根ざした精神で音楽を生みだし、ある種の土着性を醸しだすとすれば、ヤング・スモークは、あらゆる時代の音楽にアクセスできるようになった"今"の恩恵に授かったような音を鳴らしている。


 全体的にメロディアスで、ジューク/フットワークの枠を拡張するというよりは、その枠をできるだけ取っ払い、あらゆる音楽的要素を飲みこもうとする雑食性こそ、ヤング・スモークの本質のように思える。モダンな要素を取りいれつつも、シカゴで育んできた自身の音楽に誇りを持ち、聴き手を引きずりこもうとするトラックスマンと比べれば、ヤング・スモークは幾分聴き手に歩み寄るところがある。


 もうひとつ、ヤング・スモークの若さを感じさせるのは、飲みこんだ音楽的要素を繋ぎあわせるセンス。先述したように、本作は多様な音楽性に満ちた作品だが、ジューク/フットワークのルーツであるシカゴ・ハウスから続く歴史の延長線上ではなく、例えばオールド・スクール・エレクトロの文脈でジューク/フットワークを鳴らしたクエド『Severant』のように、新たな解釈でもってジューク/フットワークを鳴らそうと試みた節がある。このようなアプローチは、クエドやマシーンドラムなどシカゴ以外のアーティストならではの傾向だと思っていたが、シカゴのヤング・スモークがそれを選びとるのは、とても興味深いと思う。


 そしてタイトルの『Space Zone』、それから"AstronautSmoke"というツイッターのアカウント名("Astronaut"は宇宙飛行士を意味する言葉)などから察するに、ヤング・スモークは本気で宇宙を見ているようだ。正直本作は、過去のトラックを集めたアーカイブ的側面もあるだけに、タイトルも冗談半分だと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。シカゴといえば、宇宙について説いた偉大なるサン・ラがいた。このあたりに、ヤング・スモークに流れるシカゴの血を嗅ぎとってしまうのは筆者だけだろうか。



(近藤真弥)

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