VLADISLAV DELAY『Kuopio』(Raster-Noton)

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 オシャレなハウス・トラックを生みだすルオモや、エクスペリメンタルなミニマル・ダブを展開するヴラディスラヴ・ディレイなど、様々な名義を使いわけ披露する多彩な音楽性が高く評価されているサス・リパッティー。さらにはモーリッツ・フォン・オズワルド・トリオのメンバーとしても優れた手腕を見せるなど、その活躍ぶりは称賛に値する。そして、ヴラディスラヴ・ディレイ名義としては11枚目のアルバムとなる『Kuopio』は、リパッティーにさらなる称賛をもたらすことになりそうだ。


 本作は『Vantaa』「Espoo」に続き《Raster-Noton》からのリリースだが、リパッティーの果敢な実験精神に基づくアグレッシブな姿勢が音として明確に表現されたアルバムだと言える。まず、強烈なベースの連打で始まる「Vastaa」からして、ヴラディスラヴ・ディレイ名義にしては攻撃的で面を食らうし、そこに洗練されたキックが重なった瞬間、その攻撃性はより鮮明になる。とはいえ、次の「Hetkonen」では"静"の空間を作りあげ、アルバム全体の起伏を意識したリパッティーの心遣いが窺いしれる。


 そして、そのまま聴きすすみ、たどり着くは「Avanne」。深い霧のなかを走るようなビートはブリアルを想起させ、ビートを覆うサウンド・テクスチャーは聴き手の心を文字通りハメていく。続く「Kellute」のシンセ・ワークは、聴き手をハメていくためのトドメとして機能している。明るみを帯びたシンセで始まりながら徐々に闇へ潜っていくが、始まって4分になるあたりから突如疾走感が生まれる展開は、リパッティーの遊び心が垣間見えるようで面白い。その疾走感は「Osottava」にも引き継がれ、「Kulkee」でふたたびトーンダウンし、待つのは「Marsila」と「Hitto」だ。共にブライトな音像が印象的でありながら、同時にスラロームのような流麗さで幕引きへと向かっていく点で、アルバムの終盤を飾るにふさわしい2曲である。


 ここまで聴いていくと、すべての音が丹念に作りこまれ、そのサウンドのヴァリエーションも豊富なことに驚く。そんなサウンドに鋭いリズム、さらには丁寧な空間処理やイコライジングといったものが有機的に絡みあいながら唯一無二の世界観を構築する本作は、聴き手の深層意識に今までにない感覚を届けてくれる。こんなにも素晴らしい作品と出会えたことに、深く感謝したい。



(近藤真弥)



【編集部注】『Kuopio』は11月24日リリース予定です。

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