THE VACCINES 『Come Of Age』(Columbia / Sony)

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 彼らのサウンドはデビュー時からだんだんと変化を遂げている。とくに「Teenage Icon」の呟くようなボーカルなど、喉の手術の影響もあったりするのだろうか、と考えてしまった(最初は喉に悪そうな歌い方してたもんね)。そのほかにもファースト以上にロック/ポップスのクラシックに忠実な曲が多い。


 また、彼らはインタビューで「良いギターバンドが少ない」と嘆いていた一方で、ファーストが初登場全英4位に輝いたときにラッディズム復権の象徴として祭り上げられたことに嫌悪感を示した。つまり自分たちの果たすべき役割に意識的でありながら、どこか特定のポジションに収まってしまうのを避けていたことが、今回のセカンドの作風に色濃く影響として出ているように思う。つまり前作よりもそれぞれの曲のバリエーションがカラフルで、メロディーはクラシック。ギターのフィードバック・サウンドを基調として、どこか薄暗い雰囲気を漂わせていたファーストよりも、だいぶアメリカっぽい。彼らはその風貌とファッションこそいかにもイギリスの若手ギター・バンドだが、サウンドはじつにアメリカンなのだ。


 歌詞も相変わらず素晴らしい。例えば年齢を重ねることの無為さを歌った「No Hope」のPVでは、上下デニム姿の少年が大人の女性に愛を伝えようとするがあっさり打ち砕かれてしまう、という青臭くも爽快なストーリーが展開されているが、これってなかなかおもしろい。だって、歳をとって絶望的な気分になっているのはヴァクシーンズのメンバー(というかリリックを書いているジャスティン)のはずなのに、PVではまだまだ希望に満ち溢れている少年が描かれているのだ。それはつまり、歳をとれば何かに失望するほどの期待もなくなってしまうんだよ、ということだろうか。


 「Teenage Icon」は「おれに期待するな、おれは誰のヒーローでもない」という趣旨のリリックだが、それもやはりリアルでストリートな表現を続けるために、誰にも特別視されなくない、という心の叫びだと思う。つまりヴァクシーンズというバンドはどんなに売れようが、大規模なフェスのステージにあがろうが、"イギリスの若者"であるという現実を捨て去ろうとはしない。むしろ、そのカルチャーに愛着を持っているからこそ、オーディエンスも彼らに熱狂するのだ。


 僕は誰がどう見ても日本人で、イギリスの若者の現実も連帯感もカルチャーも、何も体感することなく育ってきたけれど、彼らの歌詞の背景にある"情けなくも愛おしい現実"には心の底から共感してしまう。前に取材したとき、ギターのフレディーが「ジャスティンの書く歌詞はユニバーサルなものだと思うよ」と話していたけれど、ほんとうにその通りだ。それに、フレディーが弾くギターだってユニバーサルなものだ(あれってティーンが「ギターってどんな音?」と訊かれて思い浮かべる、まさにその音だよね)。


 ヴァクシーンズのセカンドはファンがファンであることに誇りを持てるような、実直で素直な作品だ。大騒ぎするような内容ではないと思うけれど、彼らはオーディエンスとの結びつきを強くするようなセカンド・アルバムを選んだんじゃないかな。もし今度取材する機会があれば、そのときも「おれは君たちの曲が大好きでね」という話から始めたいと思う。



(長畑宏明)

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