DE DE MOUSE『Sky Was Dark』(Not)

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 2012年のデデマウスの動きは鮮やかであり、少しの突発さと過剰さも孕んでいた。会場限定リリースの「faraway girl」EP、プラネタリウム・ツアー以外での沢山のフェス、イヴェントへの積極的な参加。更に満を持して、フル・アルバムとしては2年半振りとなるこの『Sky Was Dark』は新しく立ち上げられる〈not records〉からの第一弾となる。創作のイメージとなったという"ニュー・タウン"が近未来的なデザインで描かれたジャケット。個人的には、そのジャケットからは香港の街を歩いた時に迷い込んだときのようなカオティックな印象も受けた。


 ニュー・タウンそのものは、郊外論として捉えられるとき、概ね批判対象になることが多い。居住者と来街者のトレード・オフ、商業施設の老朽化、交通の利便性、高齢化、リデザインの問題。また、ニュー・タウンはときに無機より、静かに寝息を立てる生活と、新しい予感と緩やかに寂れてゆく、そんな幾つもの連想を産むこともある。都市を離れて、空気感の変わる感じ、同時に、不思議なSF感。今回のみならず、デデマウスは「多摩」に着想を多く得ている。


 サード・アルバム『A Journey To Freedom』でのジャケットにはアレンジされた多摩モノレールが映っており、多摩センターに来た際に必ず訪れるというパルテノン多摩という複合文化施設への興味もインタビューなどで示す。周囲を緑が覆う80段の階段、8本柱のパーゴラ、名前のとおり、パルテノン宮殿をモティーフにした特徴的な場所。このアルバムも編曲され、パルテノン多摩内のサウンド・タワーで決まった時間になると流れるという形式を取るなど、コンセプチュアルな打ち出され方をされている。ニュー・タウン、そのどことなく停まった時間、それでも、静かに流れる情景、それらをベースに時間論として『Sky Was Dark』が描き上げる世界観はたおやかで麗しく、それでいて、どこか破綻と翳りも含む。


 8分半の1曲目「floats & falls」から電子音の柔らかい手触り、レイヤー、例のカット・アップされたサンプリング・ヴォイスがじわじわと意識を柔らかくほぐす。緻密に構成された展開、アンビエントやチルアウトではない、独特の浮遊性。引き続き、これまでの作品群のムードと違っているのが分かる、8分近い「bubble marble girl」ではユーフォリックでキラキラとした電子の粒が跳ねる、とてもチャームな曲。デデマウスの持つマジカルで、稚気と寓話性溢れる側面が凝縮されていると言ってもいいかもしれない。「flicks tonight」、「fading tonight」の並びでは"今夜"が付されているとおり、夜が持つ全能感と不気味さ、そういった二律背反的なものが夢うつつに弾ける。童謡のような「sky as dark」はタイトなメロディーの美しさと、織り込まれた音の数々といい、息をのむ。


 後半へ向けて高速のビートがそれまでのたおやかな世界観の色を変える6曲目「sky was dark」辺りから、時間をテーマにしたという彼の意図がより明確に見えてくる。ベッドタウンに仄かに漂うタナトス、「faraway girl」EPに宿っていた彼岸性や夜、幻、夢、混濁しながら生成される音風景。そもそも、時間を知る際は意識で把握しようとしても、直截的にこれが時間だ、というのは分からず、間接的に「変化としての時間」を知り、追いつく。だから、常に時間は一定的な速さを持つのかというと、時間辺りの変化量との相関性を考えてみれば、そうでもなく、現在のみを意識しながら、現在はなく、その時点で「過去」になっている。ゆえに、『空は暗かった(Sky Was Dark)』というタイトルは、追憶としての暗い空を現在のデデマウスが遡求した結果の下での彩りが強くなるのは当然で、前半の風雅さを逆回しするように、8曲目の10分を越える「star appears」にて不整脈的に挟まれるブレイクビート、また、例えば、エイフェックス・ツインやクラークが静と動、狂気と正気の瀬戸際で醸し出す得も言われぬ美しさ、そういったものにも近い、綱渡りのようないささか不穏な混乱とノイズが表出するのも興味深い。そのまま、9曲目の「my alone again」。淡々とした中に、寂寥が滲む。11曲全体を通し、『Sky Was Dark』の輪郭、物語はなぞられ、耳で視る大人のファンタジーのようなサウンド・トリップは終わる。繊細な美意識に支えられた、デデマウスとしては完全にネクスト・フェイズにいったと思える彼だけの音に溢れている。そこに、聴き手は少しの想像力を持ち込めば、自然と空は澄むだろう。



(松浦達)


【編集部注】10月17日リリース予定

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