ザ・ヴァクシーンズ

| | トラックバック(0)
THE VACCINES

台風の目は静かだって言うけど
今はその目のなかにいるのかもしれない

ファースト・アルバム『What Did You Expect From The Vaccines?』が全英で最高位2位を記録するなど、いまやイギリスを代表するバンドに成長したヴァクシーンズ。とはいえ、インタビューにも出てくるアルバート・ハモンドJr(ストロークス)とのエピソードから伝わってくるのは、ある種の少年心というか、音楽に対しての純粋な姿勢である。そんな彼らがセカンド・アルバム『Come Of Age』を上梓した。プロデューサーにイーサン・ジョーンズを迎えて作られた本作は、ヴァクシーンズらしいストレートなロックンロールが鳴っているものの、ほんの少し"憂い"もある。そのへんのことも含め、フレディ―・コーワン、ピート・ロバートソンに語ってもらった。

2012_08_The Vaccines_A1_Jesse Jenkins.jpg
photo by Jesse Jenkins

フレディ―・コーワン(以下F):(窓から外を眺めながら)東京の街並みってすごいよね(笑)。

(笑)。サマーソニックでのライヴのために来たわけだけど、東京は楽しめてますか?

F:ソウルから日本に来たんだけど、そのおかげで時差ボケもなく、すごく楽しめてる。六本木にあるロック・バーにも遊びに行けたしね。

ソウルからというのは、スーパー!ソニック(サマーソニックと連動した韓国の音楽フェス)に出演したからですよね。

F:そう。

ソウルのお客さんの反応はどうでしたか?

F:不思議なことに、始まって5分くらいはお客さんが3人しかいなくて(笑)、そのおかげで僕達もかなり緊張したんだけど、でもそれは、そのフェスはステージがふたつに分かれていたせいなんだよね。だからもうひとつのステージでのライヴが終わってからは、僕達のライヴに何千人もの人が一気に流れ込んできて、その光景は見ていて面白かったよ。お客さんが入ってきてからは、すごく良い体験ができた。

ピート・ロバートソン(以下P):いままでライヴをしてきたなかでも、一番の歓声の大きさだったんじゃないかな。

すごい! 韓国でも人気者なんですね。それでは、最新作『Come Of Age』について訊かせてください。前作『What Did You Expect From The Vaccines?』は約2週間という制作期間を経て作られたそうですが...。

P:えっ? 日本ではそう思われてるの?

違うんですか? 『What Did You Expect From The Vaccines?』リリース時のインタビューや、『Come Of Age』のプロモ資料にはそう書かれていますよ。

P:違う違う。2週間よりももう少し時間をかけて作ったよ(笑)。

そうなんですか。それは申し訳ない(笑)。

F:まあ、いいじゃないか(笑)。ごめん、続けて。

すみません、ありがとうございます。訊きたかったのは、『Come Of Age』の制作期間です。

F:いまピートからもツッコミがあったように、『What Did You Expect From The Vaccines?』は"2週間よりももう少し時間をかけて"作られたんだけど(笑)、『Come Of Age』は1ヶ月というところかな。月曜から金曜まではスタジオでレコーディング作業をして、週末はライヴをこなしてというルーティンのなかで作られたアルバムだから、僕たちにとって一番忙しい時期でのレコーディングだった。レコーディングというのは退屈になりがちなんだけど、さっきも言ったように、週末は必ずライヴがあるというルーティンのなかで作られたから、スタジオでの作業がちょうどいい息抜きになったんだよね。『Come Of Age』のレコーディングは2回に分けてセッションを行ったんだけど、制作の後半は、イギリスの田舎町にあるスタジオで作業をしたこともあって、かなりゆったりとした気分でレコーディングを進めることができた。

ちなみにその田舎町ってどこですか?

P:バースの近くにある街だよ。

F:美しい町だったね。

2012_08_The Vaccines_A2.jpg

『Come Of Age』ではプロデューサーにイーサン・ジョーンズを迎えてますが、この人選の理由はなんでしょうか?

F:無難なアルバムにはせず、ロックンロールなアルバムにするための起用だよ。彼は僕達が目指すような音を作ることに関してはスペシャリストだからね。そんな彼の特徴は、ギターの音に顕著だと思う。無駄な装飾がないストレートなサウンドという点でね。

P:それから、個性的な音作りをする人だとも思う。アルバムを聴いてもらえればわかると思うんだけど、リスナーは僕達が演奏しているその場所で聴いているような感覚に陥るような、そういう臨場感あふれる音作りが上手いと思う。

なるほど。『Come Of Age』は、『What Did You Expect From The Vaccines?』と比べてリバーブが少ないように思うのですが、それもイーサン・ジョーンズを起用したことによる影響ですか?

F:それはイーサンと話をしたときも話題としてあがったんだけど、イーサンはクリーンな音にしたがっていた。僕もギターに関しては、『What Did You Expect From The Vaccines?』ではなんであんなにリバーブかけちゃったんだろうと思っていた。まるでリバーブの海に溺れているようなさ(笑)。でもそれが普通だと当時は思っていたんだよね。でもイーサンは、「今回のアルバムではリバーブを抑えるべきだ」とアドバイスをくれたから、その影響はあると思う。僕も今回はギターの音数を増やしたいという考えがあったし、そのためには、リバーブを抑えなきゃならない。音数を増やしてリバーブを抑えないとなると、プールの中でギターを弾いているような音になっちゃうからね(笑)。

それにしてもあなた達は、ストロークスのアルバート・ハモンドJrとタッグを組むなど(去年リリースされたシングル「Wetsuit」のB面曲「Tiger Blood」で、アルバートがプロデューサーを務めている)、アメリカ寄りの人たちと関わることが多いですよね。イーサン・ジョーンズはイギリス人ですが、キングス・オブ・レオンやライアン・アダムスなど、アメリカのアーティストやバンドと組むことが多いし、音作りもアメリカンな印象があります。

F:国によってどうこうというふうには考えていない。

P:でも僕は、アメリカのユース・カルチャーにはロマンチックな印象があって好きだな。僕自身アメリカの映画や音楽に親しんできたしね。そういう意味ではアメリカ寄りの人たちと関わっているのは必然かもしれないけど、アメリカの音楽のほうがいいと思っているわけではない。今もイギリスからは素晴らしい音楽がたくさん生まれているからね。

F:イーサンはイギリス人だけどアメリカンな音作りをするという君の指摘は、すごく鋭いと思う。確かに彼は、アメリカンな音作りが得意だからね。アルバートについては、ギタリストとして優れているのはもちろんのこと、ストロークス自体も素晴らしいバンドだよね。実際僕たちはストロークスが大好きだし、だからこそアルバートと組んだんだけど、どこの国の人だからこの人と組むというような感覚はないよ。

『Come Of Age』についてのインタビューで訊くのもアレですが、あなた達が尊敬するアルバート・ハモンドJrに関する質問をさせてください。

F&P:全然かまわないよ(笑)。

ありがとうございます(笑)。アルバート・ハモンドJrとの仕事はどういったものでしたか?

F:アルバートと仕事をすると決まってから、僕はいろんな想像をしたんだ。例えば、あいさつするときに彼の家に行く。すると美しい女性が出てきて、僕達を出迎えてくれるとかね(笑)。どこかの田舎町にあるデカいスタジオに招かれたり、そういうロック・スター的な出来事があるんじゃないかってね。実際僕たちにとって彼はロック・スターだから。でも会ってみたら、普通に良い人だったよ(笑)。音楽に対しても純粋だし、そういう人と仕事ができたということは、すごく自信になった。確か僕が12か13歳のときにストロークスのファーストが出たんだけど、あれ以来本当に彼の大ファンになったんだ。彼との仕事で印象的だったのは、とある曲でイントロにフィードバックを生かした音を入れようということになったんだけど、そのために彼と一緒にアンプを囲んだんだ。その音を録るためには、アンプについているノブを4つ回さなきゃいけなくて、ひとりではできないから、彼と向かい合って「せーの!」でノブを回したんだけど、そのときの僕は、「うわー、俺、アルバートと一緒にノブ回してるぜ!」っていう感じで、すごく興奮したのを覚えてる。あれ一生忘れられない思い出になったね(笑)。

もはやただのミーハーですね(笑)。

F:(笑)。あれはほんと嬉しかった。「俺、すごい状況にいる!」みたいなさ。

2012_08_The Vaccines_A3_Christaan Felber.jpg
photo by Christaan Felber

アルバートのことをロック・スターと呼びましたが、『What Did You Expect From The Vaccines?』が全英で最高位2位を獲得するなど、いまやあなた達もロック・スターと言える立場にあると思います。そうした状況のなかであなた達に変化はありましたか?

F:変化はあったと思うけど、周りと一緒に変化しているから、変化に自覚的かというと、それはないと思う。いつの間にか変化していたって感じ。これは言葉にしづらい感覚なんだけど、気づいたら「あれっ?」ていうさ。だから変化することに違和感を抱かないまま、ここまで来たんだよね。例えば、家でラジオを聴いていたら、僕達の曲が何回も流れてくるみたいなことがあれば、変化に気づいて興奮したりするんだろうけど、今はラジオを聴く時間がないくらい忙しい。言ってしまえば、「BBC? なんだよそれ?」っていうね(笑)。台風の目は静かだって言うけど、今はその目のなかにいるのかもしれない。

状況について訊いたのはですね、『Come Of Age』には"憂い"に近い雰囲気を感じたからなんです。

F:いまは客観的になれないから上手く説明できないかもしれないけど、「Teenage Icon」では、10代のときに属していたカテゴリーみたいな場所にはもういられない悲しさについて歌っていたりするし、期待に応えられないことで生じるストレスについて歌った曲もある。さっき変化の話があったけど、その変化に対応できていない僕達の心が反映されているのかもしれない。

P:ただ、なにかしらのコンセプトがあって曲を書いたわけではない。曲をたくさん書き続けていたら、ある共通項が見出されていった感じだね。その共通項について僕が言えるのは、『Come Of Age』というタイトル、つまり大人になっていくことに対する思いが根底にあるのかもしれないということ。

F:そして歌詞について、まあ、これは傍から見ていて思ったことなんだけど、ジャスティンにとって歌詞を書くという行為がカタルシスになっているのがとても興味深かった。「Bad Mood」の歌詞を書いているときなんか、 本当にバッドな雰囲気を漂わせていたしね。だから書き終えたときは、重荷が降りたような顔をしていたのはよく覚えている。

いまちょうど話に出たんですが、あなた達にとってジャスティンの歌詞が持つ魅力とはなんでしょうか?

F:正直なところじゃないかな。もちろんミステリアスな歌詞もあるけれど、全体的には、痛ましいまでの正直さというのがジャスティンの歌詞には底流としてある。ジャスティンはラブ・ソングも書いたりするけど、ただのラブ・ソングではなく、恋愛の本質についてとことん突き詰めたような歌詞を書いたりする。そういうところが魅力になっていると思う。

第3者の視点からの意見が聞けて面白かったです。今日はありがとうございました!

F&P:ありがとう!

そういえば、単独公演の予定はあるんですか?

F:あるにはあるんだけど、ほら、大人の事情とかで言えないことってあるじゃん(笑)。場合によっては、フライングで口走ると契約違反となって、面倒なことになってしまう。まあ、いま言えることは、来年の初めにもしかして...ということだけかな(笑)。

【編集部注】フレディーが言った「来年の初め」の件、取材からしばらくたって発表されました。こちらをご参照ください。

2012年8月
取材、文/近藤真弥


2012_08_The Vaccines_J.jpg
ザ・ヴァクシーンズ
『ザ・ヴァクシーンズ・カム・オブ・エイジ』
(Columbia / Sony Music)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: ザ・ヴァクシーンズ

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/3355