印象派「SWAP」(fish for music)

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 確か印象派と出会ったキッカケは、タワーレコード関西5店舗限定でリリースされたシングル「HIGH VISION / ENDLESS SWIMMER」だったのだけど・・・あっ、ちなみに印象派というのは、mica(ヴォーカル/キーボード)とmiu(ギター/ヴォーカル)による関西発の女性2人組ユニットのことで、シスレーやモリゾ、音楽的に言えばドビュッシーやラヴェルなどの"印象派"ではないのであしからず。

 というわけで話を戻すと、「HIGH VISION/ENDLESS SWIMMER」を聴いたとき、思わずお口をポカーンとさせてしまった記憶がある。特に「ENDLESS SWIMMER」の、毒を含みつつもクセになるキュートなポップ・センスに、文字通り"やられた"のだ。ほんの少しアンニュイなヴォーカルに、語感の良い歌詞。そして好奇心をくすぐる中毒性。これらが知的ポップ・ミュージックとして上手くまとめられた「ENDLESS SWIMMER」からは、印象派のハイなセンスを感じとれる。

 そんな印象派による1年ぶりのシングル、それが「SWAP」だ。本作は前作同様タワーレコード限定シングルだが、関西5店舗限定だった前作とは違い、初の全国流通盤となっている。収録曲は「SWAP」と「IN」、それに「SWAP」のインスト・ヴァージョンを加えた計3曲。

 タイトル・トラックの「SWAP」は、ダンサブルな曲調と歯切れの良い歌詞が聴き手をどんどんハメていくポップ・チューン。ちなみに「SWAP」は"交換する"という意味を持つ英語で、オフィシャルのアナウンスによると、曲自体は純恋の讃歌だそうだ。

 しかし筆者が「SWAP」を聴いて脳裏に浮かべたのは、ポール・マザースキー監督の映画『ボブとキャロルとテッドとアリス』である。この映画は"スワッピング"、つまり複数のカップルがお互いのパートナーを取りかえて行う集団的性行為を描いたセックス・コメディーだが、「SWAP」を聴いていると、この映画に登場する愛の自由と解放の精神にそくした夫婦交換のベッド・イン・シーンがちらついてしょうがない。

 "スワッピング"を"スワップ(SWAP)"と呼ぶこともあるし、もし「SWAP」が"スワッピング"で得た興奮を描いているとすれば、純恋どころか、けっこう過激な曲のようにも聞こえてくる。「SWAP」は他にも金融/IT/自動車用語としても使われていて、それぞれ含意も違うが、「SWAP」が金融やIT、ましてや自動車について歌っているとは・・・とても思えない。

 そして「IN」。こちらもポップなダンス・チューンだが、ザ・ゴシップ「Standing In The Way Of Control」を想起させる展開に、ミスター・オワゾーに通じるキュートなアシッド感覚、さらにはジャーマン・エレクトロの要素も窺わせるなど、ほんの少しトリッピーなニューウェイヴ・ディスコである。「イン」と繰りかえし連呼するヴォーカルも、かなりキャッチーだ。

 ミックスは、ねごとや小南泰葉を手がける玉ノ井光紀が担当していて、ふたりのカラフルなポップ・センスをさらに際立たせる手腕は"さすが"のひとこと。印象派と玉ノ井光紀の組みあわせで制作されたアルバムを聴いてみたいと思わせるくらいだ。見た目は可愛らしいふたりだが、本作を聴けば聴くほど確信犯的な匂いがしてくるし、将来が楽しみな逸材である。


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