SILLYTHING『Cross Wizard』(Garuru Records)

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  シリーシング(SILLYTHING)とは、青森の音楽フェス《夏の魔物》を主催する成田大致が、ザ・ウェイバー(THE WAYBARK)を解散させて新たに始めたバンドである。アーティスト写真を、スーパーロボット大戦のキャラクターデザインでおなじみの河野さち子が描いていると聞いたときは、'必中'レベルの驚き(スパロボが分かる人にはわかるはず)を覚えたものだが、ファースト・アルバム『Cross Wizard』を聴いたら、さらなる驚きが待っていた。


  ザ・ウェイバーとしての成田大致のイメージを抱いている人ほど、本作を聴いて裏切られたと感じるはずだ。まず、ほとんどの曲を外部の作詞/作曲家に託している。そしてなにより、田中ケロ(元新日本プロレスリングアナウンサー)、声優の小林ゆう、桃井はるこ、夢眠ねむ(でんぱ組.inc)、栗本ヒロコ(ex,毛皮のマリーズ)、まつきあゆむ、和嶋慎治(人間椅子)といった、各界から参加している多彩なゲスト陣。


 そんなゲスト陣に彩られた本作は、ザ・ウェイバーとはかけ離れた音楽性なのは確かだが、エンターテイメントするという点では、'古き良きロック'を感じさせるド派手な作品で、底流にあるパンク精神も、ザ・ウェイバー時代から窺えるものだ。


  '古き良き'とはいっても、「サマーロマンサー」に代表されるアニメソング的要素や、壮大なミュージカルを想起させるアルバム全体の流れなどは、'なんでもあり'が常態となりつつある現在の音楽シーンと共振するものだ。だから、古くささはまったく感じられない。むしろ、こうしたエンターテイメントをオルタナティヴとしてアウトプットできているという点では、立派な批評性を伴った音楽である。


  現在の日本の音楽シーンを見渡すと、バンドとファンの間に緊張感が伴わない'馴れあい'が多くなり、ある種の内輪ノリと壁ができてしまっているだけに、そうしたものをぶち壊し、ロックの解釈を拡大しようと試みるシリーシングの活動は、注目に値すると思う。


(近藤真弥)

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