チーナ『GRANVILLE』(Sophori Field)

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チーナ『GRANVILLE』.jpg  ピアノとヴァイオリンを有効活用したモダン・サウンドと力強い声、そして淀んだ雲間から光が差すような希望に満ちたメロディーを奏でる4人組、チーナ。彼らが1st フル・アルバムを発表した。

 「去年カナダ・ツアーに行かせてもらって、それがバンドにとって凄く良い経験になったんです。ツアーから帰ってきて最初に取り掛かったのが、アルバムのリード曲"Granvill Island Market"なんですが、特にアルバムのコンセプトはなく、今のチーナの空気感をパッケージしたかったんですよね。グランヴィル・アイランドっていうのはバンクーバーにある大きなマーケットなんですが、カナダから帰って来ました! みたいな感覚で、アルバム・タイトルを『GRANVILLE』にしました」(Gt , microKORG / リーダー)

 高いインテリジェンスと豊かな音楽センスを持った彼らだから、ポップス、クラシック、ロック、オーガニックといった要素を自由に操りつつもとっ散らかっていたり難解な印象はなく、ハイセンスなサウンドを確かなテクニックで聴かせてくれる。そして今作はデビュー作『Shupoon!!』の頃から変わらない穏やかなシニシズムとポップさへの尋常ではない求道心を、愛しく味わえる作品にもなっているのだ。だが勿論、変化してきたこともある。

 「アレンジに関して、今まではそれぞれのパートを殆ど完成させてから皆で合わせていんですが、今作ではそれぞれが全体を意識して組み立てるようになりました。やっと自分のパートを引いて考えられるようになりましたね(笑)。音については、ライブ感、空気感を今まで以上に意識していました。前作からの2年半でライブもどんどん変わってきていて、そのライブの空気をそのまま録りたいと思っていたんですが、それが今回は出来ましたね」(Cb / 林絵里)

 どんな曲調においてもブレない林のコントラバス、どんなアレンジであっても唯我独尊ぶりを発揮する柴由佳子のヴァイオリン・プレイといった新たな発見もありながら、それらのメンバーを魅了してやまない椎名杏子の豊かな歌声に耳を奪われる。そしてそのサウンドもさることながら、興味深い詞の世界にも注目して欲しい。

 「難しい言葉で歌詞を書く方がすごく簡単なんですけど、なんかあんまり好きじゃないというか、ごまかしているというか。簡単な言葉なんだけど、本当に私から出ている歌詞を生もうと思って書いています。いわゆる正しい事は書かないっていう風に思っていて、今回のアルバムでも曲によって言ってる事が結構矛盾してて(笑)、そういうのも気に入ってます。日によって気持ちとかテンションとか違うし、そういうのも作品に出していけたらなと思っています」(Vo,Pf /  椎名杏子)

 細部にこだわった今作の音と詞に、同時に開放感が存在するのも彼らなら凄く自然なこと。セルアウト感のあるポップ・フィールドに色目を使った脱皮でもなければ、無理な変革志向があるわけでもない。自然に日々の関心のありかを綴っている。

 「本当に自分たちが良いと思ったものを作りたいです。そういうのって絶対お客さんに伝わると思ってるし、共感してくれなくてもしてくれてても、自分たちの音楽をこいつらはやってるなっていうのは伝わって欲しいです。後、チーナってどんなに暗い事言っててもなんか明るい音楽になるってよく言われるんですけど(笑)、それって多分メンバーの人柄がそうさせてるのかなーと思ってます。そういうのも聴いてくれてる人に浸透したら嬉しいです」(椎名)

 

(粂田直子)

 

 

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