YOHUNA「Revery」(Art Fag)

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YOHUNAjpg.jpg ニューメキシコ州出身で現在はウィスコンシン州を拠点とする彼女のEPである本作「Revery」。それは、2010年に50本限定でセルフ・リリースされていた音源をリマスターしたもの。ジャケットを見る限りだと弾けるようなガールズ・ポップだと思われるかもしれないが、ビーチ・ボーイズやジーザス&メリー・チェインを彷彿させるメロディにマッシヴ・アタックを思わせるビート、チルウェイヴ的な音響が広がっているサイケデリック感に溢れるドリーム・ポップなのだ。ほんのりエコーをかけた彼女のヴォーカルが美しく響きわたり、ノイジーなサウンドも印象的。

 リマスターを行なったのはノー・エイジクロコダイルズなどのミックス、マスターを手掛けたピート・ライマン。初めて本作を聴いた時は、全く人間味のない音楽だと感じてしまったが、大音量で聴くとそんなことはなく、太いビートが彼女の歌声に生命力を与えている。おそらく、ピート・ライマンがビートを強調したリマスターを行なったのだと推測でき、本作においてビートは楽曲と歌声に躍動感を与えるという言葉以上に、生命力を与えるものなのだと気付かされる。ぜひ大音量で聴いてほしい。というか、本作の良さは大音量で聴かなければ分からない。コーネリアスが『Point』で行なったように、音量も重要な音楽性だという言いがぴったりくる。

 この作品は名盤と呼べるものではなく、音楽史に残るようなものでもない。話題作でもなく、数年後にひょっこり出てくるような隠れ傑作的な音楽だ。本作に過剰な意義付けは必要ないし、僕はそういう音楽があってもいいと思う。音楽作品に意義を見付けだすことは重要だと思うが、逆説的に意義はほとんどないという意義付けもまた、純粋に音としての美しさを見出すことに繋がると思う。本作は意義付けを迂回するように鳴っていて、ふと、棚から引っ張り出して聴きたくなるような、気軽に聴ける作品だ。

 ただ、彼女は本作で実験を試みている。エレクトロニカやポスト・ロックを思わせるサウンドが散りばめられ、さらにはシンセ・ポップの要素を大胆に取り入れて、ジャンルの無効化を狙っている。たぶん、本作はアルバムへの布石なのだろう。それゆえのリラックスした雰囲気が醸し出されている。アルバムが楽しみになる作品だ。布石は十分整っている。

 

(田中喬史)

 

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