VARIOUS ARTISTS「Witchcraft EP」(Kool Switch Works Recordings)

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WITCHCRAFT EP.jpg 大げさでもなんでもなく、ジュークは世界中のミュージック・ラヴァーに届いていると思う。例えば、週一回のペースでジューク・コンピを配信している《World Wide Juke》。ここで配信されているコンピには、シカゴや日本はもちろんのこと、ドイツやオーストラリアといった国のトラックメイカーも参加しており、文字通り世界中からジュークを集めたコンピとなっている。レコード・ショップに行けば、イギリスにおいてジュークがUK流に消化されつつある過程を目の当たりにできるし、徐々にではあるが、ジュークは多くの人の耳に近づいている。「Witchcraft EP」は、そんなジュークの現状に対し日本らしさで呼応した作品と言えるかもしれない。

 本作は、関西を拠点にDJ活動するケイタ・ カワカミが監修を務めたジューク/フットワークのコンピレーションEPである。参加しているのはD.J. ソースマン、bbbbb、ピクニックウーメン、XY2O、ポンチョ+カジノ タルト、エクスコウ、アーマッド・ジャクソン・ジュニアといった面々。参加アーティストについては、全員日本人であること以外これといった詳細はなく、本稿を書くにあたって筆者もいろいろ調べてみたのだが、マッドエッグの変名であるエクスコウ以外は正体が掴めなかった。いまどき珍しいくらいの匿名性が確保されていてビックリ。しかし、本作のトラック群にはもっと驚かされた。UKガラージのタメを感じさせるXY2O「Hey My」、エクスペリメンタルなドローン/エレクトロニカを下敷きにしたエクスコウ「Yey 35」など、全参加アーティストが他ジャンルの要素をジュークに上手く落としこんでいるからだ。そしてこの落としこみの過程で、いい意味での"軽さ"や"親しみやすさ"が付帯されているのだが、これが先述の"日本らしさ"となっている。ディプロがある程度の毒抜きをしてから、ニュー・オーリンズ・バウンスを取りいれたのと似たような感じ、と言えば伝わるだろうか。

 本作に収録されているトラックはすべて興味深いものだが、強いて特筆するとすれば、セクシーな静寂を漂わせるD.J. ソースマン「How You Feel」になるだろう。ヴォイス・サンプルが印象的なこの曲は、あくまでジュークを底流に置きながら、ポップ・ソングとしても機能するサウンド・プロダクションを施し、ブラック・ミュージックのソウルを顕在化させている。シカゴ・ハウスをルーツとするジュークは、ダンス・ミュージックであると同時に最新のブラック・ミュージックでもあるが、このことをD.J. ソースマンなる人物は分かっている。ジェームズ・ブレイクも、「How You Feel」を聴いてから「We Might Feel Unsound」を作ればよかったのにね。そう思わせるだけのブラックネスを、「How You Feel」はジュークとして鳴らしている。

 

(近藤真弥)

 

※本作はKool Switch Works Recordingsのバンドキャンプからダウンロードできます。

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