VARIOUS ARTISTS『Asian Kung-Fu Generation Presents Nano-Mugen Compilation 2012』(Ki/oon)

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120816_nano_mugen.jpg 今年は少し遅めの開催だった印象のあるサマーソニックも終わり、「夏の洋楽」フェス・シーズンもそろそろ大団円ってな感じだが、その先陣を切って決行されたナノムゲンのエッセンスを濃縮した恒例コンピレーション・アルバムは、季節やトラックの新旧に関わらず、その素敵な輝きを失っていない(って、まだリリースから2ヶ月たってないわけで...。ポップ・ミュージック界では、時間の感覚がちょっと奇妙なことになっている...)。

 以前クッキーシーンが紙媒体で隔月刊だったころ、毎号コンピレーションCDをつけていた。聴いてくださったひとたちがどう思ったかはわからないけれど(いや、かっこつけずに言えば好評だった。それが目的で買ってくださっている...という話もときおり耳にしたり...。ありがとうございました!)、トラック借用交渉から曲順決定まで、毎号かなり膨大な時間と精神力をかけていた。単体の商品盤CDの選曲をやったり、クラブDJをやるときと同じくらいに。

 毎年『Nano-Mugen Compilation』シリーズを聴くたび、いつも当時のそんな作業を思いだす。とても大変だったけれど、楽しかった。ぼくは音楽バカだから。このシリーズの選曲者も、明らかにそうだと思う。「おお、このあとにこんな曲がくるのか!」「この流れ、意味あるね!」とか思いつつ、実に気持ちよく聴ける。クラブDJ的な選曲より「インパクト勝負」ではない分、賞味期限も長い。

 7月なかばにビッグな会場でおこなわれたナノムゲン・フェスのみならず、その前に各地のライヴハウスをまわったナノムゲン・サーキットの参加者たちによる珠玉のトラックが、CD2枚に全22曲ぎっしりつまっている。

 CD1の冒頭から(フェスとサーキット両方に出演した主催者)アジアン・カンフー・ジェネレーションにつづいて(後者に登場した)ブラッドサースティー・ブッチャーズが登場するところからして、いい意味で意表をついている。もしかするとブッチャーズって、ここに入っている洋楽バンドたち以上に「アジカンとは遠い」存在と思われているかも? まあ、ぼくはマーケッターではないので、アジカンのファン層がどんなものなのか、おぼろげにしかわからないけれど!

 3番手チャラの曲目が「オルタナ・ガールフレンド」というのも素敵だ。この(アーティストと曲名の)とりあわせは、なんとなく「理想的なアジカンのコア・ファン層(?)」にとって、すごくピンとくるのではないかとも思ったり...。ぼくはマーケッターではないので(...以下同上)。

 チャットモンチー、ザ・シェフ・クックス・ミー、80キッズ、フォノ・トーンズ(アジカン伊地知らによるバンド)、クアトロ、ストレイテナーなど、ぼくが「好き」と公言してはばからない日本のアーティストたちの音源もたくさん入っていて、まずはうれしい。そして彼らのトラックは、どれもグレイト。

 ちなみに、ストレイテナーの曲は「ネクサス(アコースティック・ヴァージョン)」。歌詞の《ここでリンクした》というフレーズが印象的だ。ぼくなどはこのタイトルを見ると、どうしてもウルトラマンネクサスを思いだしてしまうのだが(笑)、もう5年以上前になる放送当時のキャッチ・フレーズに「絆、ネクサス」ってやつがあった(nexus:きずな、結合、関連性のある一連のもの、集合体:Mac OS 10.5.8ビルトイン辞書より)。震災後、絆という言葉が使われすぎて(「言葉」を仕事にしている者としては)少々辟易してるところがあった。この曲の歌詞にも「絆」という言葉は出てこない。そういうところも、いいなと思う。

「これまで名前はなんとなく聞いたことあるかな? くらいの感じだったけれど(ちゃんと聴いたことなかったです。すみません...)このコンピを聴いて、かなり『好き』かもと思った」日本人アーティストは、秦基博、岩崎愛。こういう「発見」もあって楽しい!

 さて、ここからは、得意の(?)洋楽バンドに関する話です(笑)。

 以前このサイトでも述べたとおり、今年のナノムゲン・フェスでは、ファウンテインズ・オブ・ウェインモーション・シティ・サウンドトラックという、ぼくなどはまじで三度の飯より好きと言えるパワー・ポップ・バンド(と言えるのかな? 前者はより「ポップ」寄り、後者は「パワー」...? じゃないな、表面上オタクっぽいし...。まあ、「ハード・エッジ」寄り?)のそろい踏みを見ることができたという意味で、「洋楽フェス」としてもフジロックやサマーソニックに負けないインパクトが残せたと思う。ファウンテインズやモーション・シティの音源未体験で、「そこまで言うか? 本当にいいの?」みたいに興味を持ってくださった方は、是非このコンピを聴いてみてほしい。それぞれの最新アルバムからのリード・トラック(最もキャッチーな部類に属する曲)が、前後の流れもばっちりで入っているから。

 パワー・ポップ・ファンに人気の高いオズマ、USインディー・ファンなら要チェックのメイツ・オブ・ステイト、そして90年代のUKロック...というかブリット・ポップの立役者だったスウェードの曲も、もちろん収録。

 ジャンルがばらばらだって? そんなの気にするな! アジカンもそう思ってるかどうかは知らないけれど、ぼくはそう主張したい。あらゆる意味で。

 そして、スウェードの曲が「トラッシュ」であることもうれしかった! 実は、ぼくとしてはスウェードって(「好き」ではあるけれど)「大好き!」とまではいかない。とくに初期は「うーん、そこまで高評価に値するのかな?」とか思っていた部分もある。ギタリスト、バーナード・バトラーが脱退してからの、彼のソロ活動は「大好き!」なのだが...。この「トラッシュ」は、バーナード脱退後の曲。でも、ぼくはスウェードのレパートリーのなかで、これがいちばんのお気に入り(この曲だけ断トツで「大好き!」と言えるかも)。ふっきれたようにキャッチーなメロディーで、微妙なかっこつけも残しつつ、《単なるくずだよ/おれもおまえも》と歌われる部分に、ポップ・ミュージックの神髄の一形態が集約されているようで、しびれる。

 というわけで、聴きどころだらけの名コンピレーション。ナノムゲン・フェスやナノムゲン・サーキットに行けた人はもちろん、行かなかった人だって、「洋邦問わず幅広い、(オルタナ...いや、オルタナティブな)いい音楽にふれてみたい」という向きには、強烈にお薦めしたいアルバムだ。

 

(伊藤英嗣)

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