ファウンテインズ・オブ・ウェイン

FOUNTAINS OF WAYNE

何千年も昔、人は星を
空に開いた穴だと思っていた


ファウンテインズ・オブ・ウェインの最新アルバム『Sky Full of Holes』がリリースされてから、早いもので、もう約1年たってしまう。2011年の夏といえば(少なくとも、ぼく...伊藤としては)震災によって被った心の傷に、まだかさぶたもかぶっていないくらいのタイミングだった。そんなとき、気持ちを(わずかでも)おちつけるために、そのアルバムがどれだけ役にたったことか...。

"現実から目をそらす"のではなく、それをふまえたうえで気持ちをアップ方向にもっていくことができる。彼らの音楽は、常にそんな感じだった。ちょっとねじれた歌詞と極上のメロディー。4年ぶりの新作『Sky Full of Holes』は、久々にアコースティックな...風通しのいいアレンジが前面に出ており、本当に夏向きのアルバムとなっている。この2012年の夏も、たぶんおおいに聴いてしまうだろう。

そしてこの夏、彼ら自身が日本に来てくれる。いよいよ目前に迫ったアジアン・カンフー・ジェネレーション主催NANO-MUGEN FES.(開催は7月15、16日! 3連休後半だ!)出演のために。彼らは今年前半にも一度ジャパン・ツアーをおこなっているので、すごく短いスパンでの来日となる。うれしいことだ! 中心人物のひとり(ソングライターでもリード・シンガーでもないけれど、スポークスパーソン的な意味も含み「中心人物」という気がする:笑)のアダム・シュレシンジャーは、NANO-MUGEN FES.でのライヴについて、こんなふうに語っている。「全部のアルバムから少しずつプレイすることになると思う。新しい曲ももちろんプレイするけど、いくつかずっとプレイしていなかった古いレコードからのサプライズ・ソングもプレイするんじゃないかな」。おおっ! って感じ。

クッキーシーンは、『Sky Full of Holes』がリリースされたとき(いろいろ、どたばたしていて)インタヴューのタイミングを逃してしまった。是非とも聞いてみたいことがある、できればこの機会に!...というわけで、2012年における再来日直前、アダムにメールで聞いてみた!

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単独日本ツアーから、すごく短いスパンでの来日になります。日本のファンにとってはすごくうれしいことですし、今回はフェスティヴァルへの出演なので「新しいファンに見てもらえる」という意味で、あなたたちにとってもすごくいいことだと思います。いかがでしょう?

アダム・シュレシンジャー(以下A):大きな会場でプレイして新しいファンと出会えるのは、ぼくらも楽しいよ。アジアン・カンフー・ジェネレーションには、彼らのファンに紹介してくれて、すごく感謝している。

あなたたちは以前アジアン・カンフー・ジェネレーションのツアーにゲスト出演したこともあります。彼らは、今回あなたたちが出るナノムゲンというフェスを、もう10年近くつづけています。それには(最初の年以降)必ずwestern popバンドが出ています。彼らは、あなたちがやっているような、素晴らしいwestern pop musicに大きな影響を受けているので、そのようなことをやっているのです。日本には「英語の曲? 聴きたくないよ!」みたいなdomestic pop music...J-Popファンがたくさんいますが、アジカンは、そういう「壁」はよくないことだと思っているのです。ぼくも、それに賛成です。いかがでしょう? あなたの立場から、なにかひとこと。

A:音楽は世界の共通語だと思っている。音楽を楽しむためには、必ずしも言葉を知っている必要はないんだ。もしアジカンが、彼らのファンも一緒に楽しめるwestern pop を教えてあげることができたら、素晴らしいことだよね!

では、ここから『Sky Full Of Holes』に関する質問です。まず、最初に音を聴いたとき、それまでの2枚のアルバムに比べて「ぎらぎらしたところ」が減ったと思いました。そんな意味で『Utopia Parkway』を連想したファンも少なくありません。こんな意見について、どう思いますか?

A:このアルバムはよりアコースティック色が強まったと思う。ディストーションの効いたギターが前のいくつかのアルバムよりは減った。そんな意味で、きみの言ってることはわかるよ。それでもエネルギーにあふれたアルバムになったと思う。決して"メロウ"なアルバムではないというか。

今回は初めて、あなたとクリスふたりによるセルフ・プロデュース(前作『Traffic And Weather』はあなたのみ、前々作『Welcome Interstate Managers』はふたりとエンジニアさんによるプロデュース...という感じでした)。それでリラックスできた部分、緊張した部分、両方あると思います。いかがでしょう?

A:レコーディングをしていたあいだ、ぼくとクリスはほとんど反対意見を持たないでスムーズにレコーディングしていった。でも同意できないことが持ち上がったときには、本当にまったく同意できなかった。このレコードを完成させるまでには、かなりハードな時期もあったよ。最終的には完成させることができたけどね。外側からのプレッシャーはなかったな。ただ、どの曲を使うかでお互いに妥協しなければならなかった部分が大きかった。

2012_07_FOW_A2.jpg録音物の「原盤権(master rights)」を自分たちで持ち、各国にライセンスするという形をとったのでしょうか?

A:実は、ぼく自身も細かい話はよく知らないんだ! 全世界でリリースするのに、たったひとつのレコード契約をするのではなく、違う場所では違うレーベルと契約するようにしたってことはたしかだよ。アメリカ国内ではYep Roc、ヨーロッパではLoJinx、そして日本ではワーナー、って具合に。

米国盤を出しているYep Rocは、なかなかいい趣味のリリースをつづけています。主宰者は古い友だちだったりするんでしょうか?

A:彼らのことは個人的には知らないけれど、レーベルには気に入っているアーティストがたくさんいるよ。実は、ぼくらが契約している弁護士(法律家)がレーベルの経営者たちと友達なんだよね(笑)。

『Sky Full Of Holes』の曲たちを聴き、歌詞を読んでいると、いい意味でふたたび若々しくなったというか、「Action Hero」なんて曲もあることで、子どもの心をとりもどしたとさえいえる! と思ってしまいました(笑)。ソングライターのクリスの状態を知りたいということも含み、こんな意見に関するあなたの意見を聞きたいです。

A:おもしろいね。実際のところ、「Action Hero」は中年で父親になっているって話なんだけど(笑)。でも若々しくとらえてもらってうれしいよ! この曲は、実際のところは年を取っていくっていうことに関する曲なんだけど、そういう事実を認めること自体が逆に若々しく感じた、ってことかな? これはぼくが書いた曲のひとつ。知っているとは思うけど、ぼくとクリスは一緒には曲を書かない。それぞれが書いて、バンドに持ってくるんだ。でも今回のアルバムでは、クリスは前のアルバムよりももっとたくさん書いている。実は彼は、それまではほとんど完全に作曲をやめそうにもなっていたんだよ。だけど、このレコードでのクリスは、前よりもずっとクリエイティヴで、いろんなことにインスピレーションを感じていたみたいだよ。

ボーナス・トラックを除くラスト・ナンバーは「Cemetery Guns」。(歌詞の内容ではなく)このタイトル(のみ)から、ザ・スミス「Cemetery Gates」を思いだしてしまいました(笑)。

A:たしかにタイトルは似てるけど、曲は全然違うよね(笑)。「Cemetery Guns」はクリスが書いた曲だけど、彼が書いた中でもベスト・ソングの1曲になったと思う。

アルバム・タイトルは『Sky Full Of Holes』。昨年原発事故を経験した日本人としては、放射能をはじめとする環境問題(オゾン・ホール含む)にさらに自覚的にならざるをえないと、ぼくなどは思っています。このタイトルは、そんな気持ちに響きました...。そんな意見について、どう思いますか?

A:このタイトルは、意図的に環境問題について語ったものではないけどね。これは「Cemetery Guns」の歌詞から取られたもので、ぼくらはただ、すごくインスピレーションを掻き立てる言葉だと思って選んだだけなんだ。曲の中では、軍隊葬での発砲事件が語られている。でも曲の内容を知らなかったらそれは知らないわけで、誰でも自由に想像してその言葉の意味を決めていいと思うんだ。その連想も、うれしいよ。ぼくは星のイメージを思ったよ。何千年も昔、人は星を空に開いた穴だと思っていた。

以前インタヴューしたとき、ファウンテインズ・オブ・ウェインのアルバムは幕の内弁当(bento-box)のようなものだ、という話になりました。ぼくはそれに感銘を受けて、自分の個人ブログに「人生は幕の内弁当(Life Is A Bento-box)」とうタイトルをつけました。当然、10CCの曲名「人生は野菜スープ(Life Is A Minestrone)」のもじりですが(笑)。前作2枚が、ちょっと派手な色のついた具も入ってるような弁当だとしたら、今回はだし汁や焼き方などのこだわりで勝負した老舗の弁当、という気がします。いかがでしょう?

A:ぼくらの作った弁当が、こだわりの老舗の味に感じてもらえてうれしいね! このアルバムは、サウンドやテクスチャーにより統一感が感じられるものになったと思う。ぼくらのほかのレコードの何枚かよりもね。それでも、曲やそこで語られるストーリーは、これまでと同じようにバラエティーに富んだものになっていると思う。そうだよね?

2012年7月
質問作成、文/伊藤英嗣
翻訳/中谷ななみ

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ファウンテインズ・オブ・ウェイン
『スカイ・フル・オブ・ホールズ』
(Yep Roc / Warner)

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