VARIOUS ARTISTS『The Silk Road』(100% Silk / Melting Bot)

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『The Silk Road』.jpg 「面白いことはみんなここ西海岸で起こっている」とは、《Magniph》のインタビューにおけるバーン・オウルの発言だが、そのUS西海岸の盛り上がりを代表するレーベルといえば、アマンダ(LA・ヴァンパイアズ)/ブリット・ブラウン夫妻によって運営されている《Not Not Fun》であり、姉妹レーベルの《100% Silk》だ。

 エクスペリメンタルなドローン/アンビエント作品が多い《Not Not Fun》に対し、《100% Silk》はダンス・ミュージック路線を強く打ち出した音源をリリースしている。主にインディー界隈からの反応が多い《100% Silk》だが、カタログの大半はハウスである。そう、いまやハウスの更新を促しているのはインディー・ミュージックなのだ。そんな《100% Silk》のダンス・ミュージックは、80年代後期~90年代初頭の熱気を帯びたバレアリック精神、そして開放的なエネルギーに満ち溢れた明朗快活なものだ。

 『The Silk Road』は1000枚限定のコンピレーション・アルバムで、日本独自企画盤となっている。監修をアマンダが務め、それをブリットがサポートする形をとっている。基本的には《100% Silk》印のインディー・ダンス・ミュージックを収録しているが、シカゴ・ハウスのエロティシズムを感じさせる曲もある。それが明確に表れているのはフォート・ロメウ「Say Something」、LA・ヴァンパイアズ・バイ・オクト・オクタ「Found You」といったところだろう。そして、呪術的ヴォーカルが美しいマリア・ミネルヴァ「A Love So Strong」のように、"飛ぶ""ハマる"といった意味での"踊る"を鳴らす曲もある。こういった具合に、本作にはダンス・ミュージックのあらゆる要素が詰まっている。

 驚いたのは、マジック・タッチ「Clubhouse」が収録されていること。この曲は、ミラクルズ・クラブのハニー・オーウェンスが参加したレイヴィーなトラックだが、スロウなハウスが多い本作のなかでは少々浮いている。昔《Avex》が出していた『Super Club Groovin』シリーズに収録されていてもおかしくないというか・・・。つまりジュリアナ系に近い。ローズ・オブ・アシッド、ジニー、L.A.スタイルを想起してしまう疾走感。こういう意外性も《100% Silk》の面白さだ。

 本作を聴くと、アマンダは流行を意識した最先端指向者ではなく、あくまで自分の感性に従う自己信奉者であることが分かる。それは、元々はライターという"言葉の仕事"を目指していたアマンダが、ポカホーンティットでのノイズ/ドローンを経て、ミラーボールが煌めくダンスフロアに辿り着いたことからも明白だ(このアマンダの遍歴は、言葉から離れようとする音楽が増えた"今"を語るうえでも重要)。こうした従来の価値観ではありえない文脈が平然とシーンの潮流になる。それがテン年代以降の音楽なのだ。この事実をアマンダは、自ら急先鋒となって繰り返し主張する。すべての音楽がフラットになった今だからこそ、自分の感性を信じ、音楽に触れ、愛すること。

 Let's make a new history!

 そんな情熱に満ちた志が《100% Silk》にはある。

 

(近藤真弥)

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