CREAM DREAM『Love Letter』(Mishka)

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CREAM DREAM『Love Letter』.jpg  とどまることを知らないインディー・ダンスの盛りあがり。そんなインディー・ダンスの熱狂と共振する面白いアーティストが現れた。その名もクリーム・ドリームである。

 クリーム・ドリームことテディー・ケルクは、ニューヨーク出身の19歳。テディーはこれまでに、70年代ディスコをモダンにアップデイトした「Paradiso」、ハウス色が強い「Total Babe」、トリルウェイヴに通じるトラックを収めた「Spliffy Beats Vol.1」の計3枚をセルフリリースしているが、これら3枚から窺えるテディーの音楽性は、過去から現在までを網羅し接合するものだ。もともと70年代ディスコ/ファンク/ソウル/ハウス/ヒップホップを好んで聴いていたテディーは、年齢的にもポスト・インターネット世代と呼べるだけに、従来の歴史/文脈を超越した網羅的姿勢で音楽に接するのはあたりまえといえばあたりまえだ。

 そんなテディーの姿勢は、ファースト・アルバム『Love Letter』でも変わらない。従来のディスコ/ファンク趣味に加え、90年代前半のNYハウス、さらには「Musique」期のダフト・パンク顔負けのフィルター・ハウスがアルバム全体を支配している。折衷的なバレアリック精神を通して、スターダストの大名曲「Music Sounds Better With You」を今に蘇らせたような・・・。そうした意味で本作は、90年代の雰囲気が漂う懐古的作品だと言える。しかしその懐古は、現実に対し諦念を抱いたすえの懐かしみではなく、時代の流れによって切り捨てられたものへの憧憬である。

 本作を聴いていると、日本でいう"バブル"と呼ばれていた時期の風景が目に浮かぶ。出会いを求めダンスフロアにくりだし、そこで見つけたお目当ての異性(もちろん同性もアリだ)のために高い酒を買ったり、ブランド品の袋を両手に抱えながらショッピングに勤しんだり・・・。だがそんな享楽的風景も、今では風前の灯火。せいぜい赤文字系の雑誌で見かけるくらいだろう。それでもテディーは、人々を踊らせようとする。笑顔であふれる煌びやかなダンスフロアの幻影、そして、"踊ろう"と連呼される「Dancin'」に顕著な切実さを抱きながら。その切実さは、"排除しない"という音楽の本質と交わることで盲目的ノスタルジーから解放され、"いまここで楽しもう"とする強さに変換される。そう考えると『Love Letter』とは、現在と未来に宛てた恋文なのかもしれない。少なくとも、過去への郷愁というネガティヴなものではない。「Bad Girl」で叫ばれる《Oh Yeah!》には、そう思わせるに十分なポジティヴィティーがある。こういう音楽がもっともっと増えてほしい。もっともっと。

(近藤真弥)

※本作は《Mishka》のバンドキャンプからダウンロードできる。

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