SUN KIL MOON『Among The Leaves』(Caldo Verde / Calentito)

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cover.jpg 90年代におけるスロウ・コアの草分けバンドである、レッド・ハウス・ペインターズの中心人物を務めていたマーク・コゼレックによるソロ・プロジェクト、サン・キル・ムーンの5枚目のアルバムがリリース。ぽそぽそした響きのナイロン弦による、クラシック・ギターを彷彿させるテクニカルなアルペジオを中心に、マーク・コゼレック節の寂寥感あるメロディを物悲しく歌うスタイルが、サン・キル・ムーンの(特に前作で顕著であった)スタンスである。本盤においては、バンド編成の楽曲をはじめ、鉄琴やバンジョーなどの小さい楽器やストリングスなどが多用されている。全編を通して弾き語りの楽曲を中心に構成した前作『Admiral Fell Promises』ほどの強烈なノスタルジーさはなく、アルバム前半は、どこか牧歌的でさえある瞬間がある。

 とりわけ、ギターの音色が今までになく明るいトーンであることが印象的である。中音域を強調したウォームな響きから、ドライで軽快なトーンへ変わったことで、哀調を帯びたアルペジオでありつつも、穏やかな海や晴れた空などを想起させる。「Sunshine in Chicago」「Elaine」などアルバム前半の楽曲は、フォーキーなフレーズと歌声が相まって、とても優しさに満ちているように聴こえるものの、6曲目「The Winery」のサビから7曲目「Young Love」を境に、どんよりとした曇天が広がっていき、ずぶずぶと郷愁の奥底に落ちていく楽曲が目立ち始める。そして「UK Blues」を迎えた頃には、それらが単なる明暗や陰陽とはかけ離れた次元のカタルシスを生んでいることに気付かされる。マーク・コゼレック関連の作品で言い表すならば、レッド・ハウス・ペインターズの『Ocean Beach』に近似しており、前々作までのサン・キル・ムーンにおけるスタンスへ回帰しているようにも感じる。

 仕事の話や恋愛の話、ギブソンのブリッジやネックを調整してくれた男の話など、概ね身近な物事を対象としてリリックが綴られている。目がちかちかする黒地の歌詞カードには、白地の歌詞が途切れなく埋め尽くされており、その裏地は対照的に黒の単色で塗りつぶされており、これもまたインパクトが大きかった。

 今回も、デス・キャブ・フォー・キューティー『Transatlanticism』をはじめ、様々なアーティストのエンジニアやアシスタントを務めているAaron Prellwitzがエンジニアとして呼ばれており、その他スペシャル・サンクスとして、タイトルの元となった小説の著者であるジョン・コノリーの名前が、クレジットに挙げられている。2枚目のディスクは、オルタネイト・トラックとライヴ音源を収録したボーナス・トラックが集められており、中でもこのライヴ音源、かなり深いリヴァーヴがかけられていることが印象的で、本編にはない気持ち良さがある。そして、来日ツアーである。東京公演は、キリスト品川教会グローリアチャペルでの開催である。これは期待せずにはいられない。

 

(楓屋)

 

※国内盤は7月11日リリース予定。

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