THE PONY「Little Apartment」(Pastel Music)

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THE PONY.jpg  最近では韓国に行くと、まずはソウル中心街内の弘大(ホンデ)にアート・シーンの芽吹きがあり、ライブ・ハウスやアトリエも包含し、NYのかのThe Factoryを思わせる磁場も仄かに出来あがってきている。そこにある弘益大学という芸術系大学の子たちや集まっているアーティストと話を交わすと、例えば、日本のオルタナティヴな音楽や文学への愛好、西洋の音楽でもエッジなもの、アンダーグラウンド・シーンにも詳しく、またはバンクシーのことで盛り上がったりもする。彼らは容易にネットなどを経由して、ボカロにも中田ヤスタカ辺りのエレクトロニック・サウンドにも敏感で居ながらも、ダブステップ、ジュークまでを平質にリテラシーする能力の高さも凄いが、よくよく鑑みれば、《Pastel Music》レーベルの昨今の動きの活発さも思うと、K-POPではなく、K-ALTENATIVEともいえるような目覚ましい台頭をしてきているのも当たり前なのかもしれない。

 Daydream、Ninaian、Jowallなどのポスト・ロックを通過した鮮明なアンビエンスを描くバンドも着実に評価が定められてきてもいるが、このたび、紹介したいのはボーカルのチェ・サンミン、ギターのキム・ウォンジュン、ドラムのグォン・オソク、ベースのユ・スンボからなる4人組のThe Ponyの3年振りとなるEP「Little Apartment」。既に、ホンデ・シーンの気鋭として知っている方も居るかもしれない、独自のセンスで少しずつ期待を掴んでいるクールなバンドだ。

 2009年の第一集では、00年代のストロークス、リバティーンズを筆頭としたガレージ・ロック・リヴァイヴァルの波に影響を得た荒々しさを帯びたサウンドに程好いポップネスと明瞭なフック、性急な青さを含んだ佳作だったが、このEPでは試行錯誤の痕と次へ向けての冒険心を詰め込んだものになっている。

 主に音楽的語彙でいえば、80年代後半のネオアコからシューゲイズ・サウンドを照応しながら、ダウナーなイメージを鏡面の内側に向けて刻むという3年前とは違った憂いも反射した青さが映えている。ヴォーカルのチェ・サンミンの声がプライマル・スクリームのボビー・ギレスピーのような気怠さと細さも帯びているからなのか、このEPに収められている5曲は、それぞれ微妙な色の違いと差異はあれども、甘美な背徳感が心地好くも背面に張り付いている。

 1曲目の「ソウル市の春」の無機的な電子音とドラムマシン、淡々とした展開からじわじわと陶然たる音の拡がりに浮遊感が加わる、その様にはジョイ・ディヴィジョンの残影が明らかに見える。一転、2曲目「君の家」は大胆にシンセが取り入れられたポップなナンバーになっているがしかし、振り切るよりは抑制のコードを這って行く辺り、ヴェルヴェッツ・チルドレンらしいところも伺える。続いての3曲目「ラジオ」はセカンドの頃のホラーズ辺りのアート・ロックとの近似を示し、4曲目「アンニョン」は轟音のギターがサウンド・アトモスフィアを形成し、高らかに響く昂揚感を保持し、5曲目の「誰の部屋」はザ・キルズ辺りへの接近も見え、上品な頽落と言えるだろうか、ヴァルネラブルに低熱の路を潜航してゆく。

 5曲という枠で全体的に、骨身だけのサウンドに得も言われぬ陰翳と聴き手の意識を刺激するサイケデリアを手に入れた過渡期としてのEPの意味は大きいが、来るべき第二集に向けて、成長痛かもしれないこの深化は彼らのポテンシャルを試す段階のものでもある。韓国から国境を軽やかに越えて、全世界に響くサウンドが世の中に充溢してきているだけに、こういったインディーズ・シーンから着実にオルタナティヴな胎動が出てきているのも注視に値すると思うとともに、彼らの動向も追いかけたい。

 

(松浦達)

 

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