THE DEMOS『Lovely』(Young Lion Of The West / Thistime)

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THE DEMOS.jpg リラックスしていてフレンドリー。ジャム・セッションしていたら曲がいくつも出来てしまったというような肩肘張らない楽曲がこのアルバムに詰まっている。まさにジャケットの写真みたいに気持ちの腰を下ろしてお酒でも嗜みながら聴けるロックンロール。きっと本作『Lovely』は音楽シーンに波を起こさないし、バンドはカウンター・カルチャーとしてのロックを演る意思もないのだろう。そこが素敵で、音楽は娯楽的に楽しむものというベタな言葉が本作の前では全く陳腐に響かない。そもそもバンド名がザ・デモズという、冗談なのか本気なのか分からないところにインディー・ロックの匂いがする。こういう気取っていないバンド大好きなのだ、僕は。

 ニューヨーク出身の男性2人によるザ・デモズ(ジャケットに映っている女性はメンバーではないのが残念)。彼らのファースト・アルバムである本作には敬愛するビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ストロークスの音楽性が色濃く反映されている。「Nervous」はストロークスの拝借すれすれ。そこかしこにビートルズやビーチ・ボーイズの音楽性が散りばめられているが、「ロックとはこうあるべき」という懐古的なところはなく、ローファイ感溢れるパワーポップを展開し、アート気質なんて丸めて窓から投げ捨てた爽快感が満載。共同プロデューサーに元ロングウェイヴのマイク・ジェイムズをむかえ、ミックスはホワイト・ストライプスの 『Get Behind Me Satan』 でグラミー受賞の経験もあるジョン・ハンプトンということから窺えるように、彼らの本質にあるのはグッド・メロディ、ローファイという、ビルト・トゥ・スピルやロングウェイヴが持っているものなのだ。

 ただ、ザ・デモズの場合はマット・ポンドPAやデス・キャブ・フォー・キューティーの『We Have The Facts And We're Voting Yes』にあるような哀感をも持ち合わせている。本作を「単なるビートルズの模倣」と評する向きはあるのかもしれないが、歌声のエコーの効かせ方やメロディ・ラインはデス・キャブやマット・ポンドPAのそれを取り入れたものであり、60年代的な音楽だと一口に言えず、ザ・デモズは歴史的な文脈から外れることを楽しんでいるように聴こえる。

 パソコンのディスプレイを前にクリックを数回すれば様々な音楽が聴ける時代にあって、ザ・デモズはビートルズもデス・キャブも並列に捉え落とし込む。無邪気なまでに。それは近藤氏がグライムスのレヴューで指摘したようにポスト・インターネットに通じるところがあるのかもしれない。ただ、ザ・デモズの場合は情報を絞り、ロックンロールからの遺脱を、ポップ感を失わないまま追求している。穏やかな楽曲に突如ギター・ノイズを入れたり、室内楽の要素を取り入れたり。どんなに親しみやすくとも、ロックという表現には常に歪みや痺れが内在されている。本作も例外ではない。そういった音楽性を、タイトルにあるように、ざっくばらんな調子で"Lovely"と言ってしまえるところがザ・デモズであり、痛快なのだ。

 

(田中喬史)

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