RON SEXSMITH『Long Player Late Bloomer』(Cooking Vinyl / Thirty Tigers / Yamaha Music & Visuals)

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RON SEXSMITHjpg.jpg ロン・セクスミスの作品に間違いなんてあるはずがない。いつものフォーキーな感触よりもパワー・ポップを全面に打ち出した今作でも、あくまで彼らしい「感じの良さ」は失われていない。ただ、バンド・サウンドに近づいた本作からは力強い確信めいたメロディが聴こえてくる。「Love Shines」なんてキーンの新曲だとしてもおかしくないくらいで、一聴しただけではロン・セクスミスらしさを認めることができなかったが、何度も聴いていくうちに「ふむ、これは間違いなくロン・セクスミスだ」となるから不思議だ。彼の作品は毎回そう。最初聴いたときには名作だと断言できずに、数か月を通して何度も聴いていくうちに自分のなかで欠かせないマスター・ピースになる。それがもう何作も続いている。そんな信頼の置けるアーティストはほかにライアン・アダムスくらいしか思いつかない。

 このレビューを書いているいまが2012年の4月ももう終わるころだから、アルバムのリリース(2011年3月)からは1年以上が経っている。しかしクッキーシーンで発表予定の「Private Top10s Of 2011」にも入れたこの作品について改めて書こうと思ったのは、少しでも多くの人に聴くきっかけを持ってもらいたいから。わたしもかつて音楽雑誌である人の熱心なレビューを読んで彼の音楽に出会った。それが高校生のときで、毎日毎日何の気なしに彼の曲に耳を傾ける時期があった。心底幸せな気分になれる音楽だったし、それはいまでもまったく変わりない。今作でいえば、例えば「Every Time I Follow」のサビへ突入する直前のギターのフレーズや、ブリッジ部分でギターとピアノの音色が重なる瞬間。「Believe It When I See It」の真っ青な空が開けていくような勢いのあるイントロ。そして「Love Shines」のピアノが織りなす天上の響き。

 人にはぜったいに、どうしても乗り越えられないような辛い出来事が起こる。そういうときはどうせ乗り越えられない。だから自分の心のなかにある光を見出そうと必死になる。

《僕たちの夢を現実にするために 心の奥深くの闇から煌めきを届けるんだ/嬉し涙から光が現れるまで それは僕の愛が輝くとき》「Love Shines」

 ありきたりなメッセージかもしれない。それでも彼が情感たっぷりに歌うから特別な曲になる。たぶんずっと大好きなアーティストのうちの1人です。

 

(長畑宏明)

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