ORBITAL『Wonky』(ACP / Beat)

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ORBITAL.jpg オービタルが戻ってきた。もちろん20周年を記念したベスト・アルバム『20』と、シングル「Don't Stop Me / The Gun Is Good」をリリースし、再結成ツアーを敢行したのは知っている。しかし、オリジナル・アルバムとしては『Blue Album』以来8年振りとなる『Wonky』こそ、本当の復活宣言と言えるだろう。

 本作は、オービタルの"過去"が随所に散りばめられたものとなっている。なんせ1曲目の「One Big Moment」は、「今日は思い出を選んでいただくタイム・リミットです」という日本語のナレーションで始まる。このナレーションが示唆するように、本作にはオービタルの復活を祝うかの如く、過去の音楽的ハイライトがいくつも見受けられるが、そのハイライトは、「Stringy Acid」でひとつのピークを迎える。壮大なシンセ・ストリングスが恍惚的な「Stringy Acid」は、「Chime」から『Blue Album』までの要素がモダンにアップデイトされた形で詰まった、オービタルの新たなクラシックである。ゾラ・ジーザスが幻想的なヴォーカルを披露する「New France」も素晴らしいが、聴き手をユーフォリックの境地へ導く「Stringy Acid」は、本作に収録されている曲群のなかでも飛び抜けている。

 7曲目「Beelzedub」以降は、オービタルの時代に対する目配せが窺える。「Beelzedub」はスクリーム以降のダブステップを感じさせるし、グライムMCレディー・レシュールをフィーチャーした「Wonky」は、元来オービタルが持つ秀逸なメロディー・センスが発揮された新機軸と言える曲だ。アルバム後半に顕著な雑食性はオービタルが持つ特徴のひとつだが、その雑食性は本作でも健在で、頼もしいかぎりだ。

 オービタルのキラキラとした電子音の調べは、テクノが持つ夢を今に伝えてくれる。テクノは音に語らせることで言葉を必要としない音楽になったが、そんなテクノの本質を、オービタルはしっかりと受け継いでいる。時が流れ、音楽性に多少の変化が生じようとも、根っこの部分は変わらない。だからこそ、オービタルは古びないのである。

 

(近藤真弥)

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