MYSTERY JETS『Radlands』(High Note / Hostess)

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MYSTERY JETS.jpg この人たちのファーストからの変貌ぶりには改めて驚く。だってファーストではメンバーのお父さんがバンドに在籍していて、森の精みたいな格好して中毒性のやたらに高いヘンテコなポップミュージックをやっていたんだから。何々っぽい、というのが皆無なバンドだった(もちろん過去の素晴らしい音楽からの引用がいくつか認められたにしても)。セカンドから「Two Doors Down」というあまりに素晴らしいフロア・アンセムを生みだしたときから現在に至るまで、常に彼らはわたしたちが想像するミステリー・ジェッツというバンドの最高点を軽々と超え続けた。あるいは2000年代でもっとも評価するべきバンドのひとつに対して、個人的にあまりに称賛の言葉が少なすぎたんじゃないか、といまは後悔すらしている。

 そして4枚目となる今作から先行シングルの「Someone Purer」の全貌が明らかになったとき、彼らがシンセサイザーのキャッチーな音色に潔く別れを告げ、アメリカンな乾いたポップスに向かったという事実に、深く頷かざるを得なかった。これは当然の流れだった。彼らは80年代ニュー・ウェイヴやポップスの恩恵だけを受けていまの音楽性を築いたわけではない。それはもともと彼らのなかにあったものなのだ。彼らには素晴らしいメロディを書くセンスがあったし、それを大仰にせずセンス良くまとめる編集能力も備わっていた。おそろしくバランスの良いバンドなのだ。

 ファッションもクールだ(いまのバンド・マンでクールなのは、ドラムスか、ミステリー・ジェッツか、ウォークメンか、その3つが最高峰だろう)。そんな完全無欠のインディー・バンドに対して、わたしはやっと心から夢中になれるアルバムに出会えた。『Radlands』はまず、これまでのキャリアを総括するような大名曲にしてタイトル曲の「Radlands」でスタートする。前述の「Someone Purer」はライヴでも大合唱間違いなしのビッグ・アンセム。「Greatest Hits」はブランダン・ベンソンを彷彿とさせるアメリカン・ポップス。いまの時期の日曜の晴れた朝にうってつけの曲だ。こういう曲は余裕がないと書けない。1曲1曲挙げていくとキリがないな...(トーキング・ヘッズみたいな曲もある)。

 《Made in USA》

  そんな言葉が真っ先に思い浮かぶ。米テキサス州オースティンでレコーディングされた今作だが、何でこんなにも気に入っているんだろうとよくよく考えてみたら、単にヴィンテージ・アメリカの香りがするからではなく、キラーズのセカンドにも通ずるグラマラスな魅力を『Radlands』にも感じるからだった。セカンド、サードを経てこその一枚。2012年、現時点で断トツのベスト。

 

(長畑宏明)

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