LA CHIVA GANTIVA『Pelao』(Plankton / Crammed Discs)

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LA CHIVA GANTIVA.jpg ライヴ、現場でこそ体験する「一回性」は「永遠」と止揚されるとしたならば、それは記憶に還元して個々たる豊潤な内面を拓けるのかもしれない。個人的なことだが、いつかスペインに行ったとき、昼間からビールを煽り、燦燦たる太陽の下で歌われる広場での酔客たちの舞い、バリでのケチャ・ダンス、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの舞台で上に上げられて踊った記憶。アーティストは「向こう」に居る存在ではなく、「こちら」に居る人たちでもあり、更には言語の問題は大きくても、世界中で熱狂を巻き起こす東京スカパラダイスオーケストラのように、音楽は規定を越えて、あちこちで鳴る。

 この度、紹介したいのはベルギー在住のコロンビア系の移民3人を主体としてなる7人組のラ・チヴァ・ガンティーヴァ(La Chiva Gantiva)。メンバーはRafael Espinel(Lead Vocal, Percussion)、Natalia Gantiva (Tambora, Percussion)、Felipe Deckers (Guitar, Piple)、Floriant Ducet (Clarinet)、Martin Mereau (Drums, Trumpet, Marimba Seppe)、Van Hulle (Bass)、 Guilaume Codutti (Congas)、Ho Duc Tuan(Sax)。元々は、デザインを学ぶためにコロンビアからブリュッセルに来ていたラファエルが建築やアートを学ぶために同じ場所に居たナタリアとフェリペと出会い、05年に始まる。その後も各地でのパフォーマンスへのオーディエンスの熱狂や08年に自主制作された5曲入りのCDも話題を呼び、メンバーも増えて、満を持して彼らのファースト・アルバム『Pelao』が《Crammed Discs》から昨年、リリースされた。そして、この度、無事に国内盤化され、手に取り易くなったのもあり、興味がある方はチェックしてもらえたら、と思う。

 このスタジオ盤に溢れるアッパーで晴れ晴れとした空気感もそうだが、映像でも分かるライヴ・パフォーマンスで見せる楽しさが世界中の人たちを虜にもしたところも大きいだろう。勿論、クンビアのエッセンスは受け継がれているが、そこにアフロ・コロンビア音楽、ジェームス・ブラウンのファンクネス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのミクスチャー・ロックの要素を取り入れ、ソリッドなグルーヴを起こすことを目標しているのか、これまでの「ただ、揚がればいい」という楽団的な所ではなく、彼らはより知的なアプローチと、また独特のアート・センスも見える。何故ならば、アート・ワークのみならず、リズムとアレンジメントにも相当、凝らされたところが伺えるからだ。怒涛のようにパーカッションが鳴り響く中にふと挟まされる軽快なトランペット、ベトナム系移民のHo Duc Tuanのサックスも絶妙なスパイスを加え、聴くだけで自然と気分が揚がってくる曲も多い。しかし、アルバム6曲目の1分半ほどの「Pink Flamingo」では音響そのものへの拘りがあるとも思えるシークエンスだ。アルバムの表題曲「Pelao」はラファエルの韻を踏むようなボーカルと展開といい、キャッチーで誰もが歌えそうな明朗なものになっていたり、この11曲では勢いだけではない、ジャケット写真みたく、音楽そのものを楽しむ姿勢が充溢している。

 そう、こういったジャケットもカラフルでとても良いと思う。

 何かと重苦しい話題が世を巡るが、彼らの音で持ち揚がった心で見つめる現実は少しの華やぎをもたらすのではないだろうか。近くの来日公演を願うのとともに、フェスティバルなどの大きいステージでのパフォーマンスを体感してみたいアクトの一つだ。

 

(松浦達)

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