THE WEDDING PRESENT『Valentina』(Stickman / Scopitones / & records

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THE WEDDING PRESENT.jpg 結成27年目にして9枚目となる、4年振りのオリジナル・アルバムである。ソニック・ユースよりもエモーショナルな展開ときっちりとした演奏で、スーパーチャンクよりも腰を据えたミドル・テンポであり、デイヴィッド・ゲッジが掻き鳴らすノイジーなギターは、全編を通して変わらずかっこいい。録音時のバンド・メンバーは前作から大きく変わり、本盤を境にバンドを脱退するグラエム・ラムゼイと、ドラマーのチャールズ・レイトンが参加し、バック・ヴォーカルとベースをペペ・ル・モコという女性が担当している(和音ベースのフレーズが非常にかっこいい)。ミックスもイギー・ポップやザ・マーズ・ヴォルタ、近年ではレッド・ホット・チリ・ペッパーズやアデルなどのエンジニアに参加しているアンドリュー・シェップスが引き受けている。事実上ソロ・プロジェクト化しつつも、新しいバンド・メンバーやエンジニアを迎えることで、新人バンドの傑作セカンド・アルバムかと思わせるような、瑞々しい勢いを放っている。

 単純なテンポでは測れない疾走感があり、アルバムの最後まですんなりと聴き通せる。しかしながら構成や展開は複雑であり、テンポを急変させることで場面をがらりと転換させる手法が多く取り入れられている。「The Girl From the DDR」のアウトロで聴ける慌ただしくもコミカルな展開は、さりげないものの、本盤のハイライトの一つと思わせるほどに見事だ。天野明香という女性によるナレーションが印象的なラスト・トラック(国内盤はボーナス・トラック2曲収録)の「Mystery Date」でも同様の手法が使われており、イギリスからやって来た男性を誘うナレーションが唐突に流れるアウトロは、本盤全体のアウトロであると同時にイントロでもあるようだ。

 熟練のソング・ライティングを抜きにしても、ジャングリーなカッティング、暖かみのあるアルペジオ、ファズによるブーミーな単音フレーズなど、ギターの音色を追いかけているだけで十二分にわくわくできる傑作である。『SEAMONSTERS』の再現パフォーマンスが期待されている来日公演が待ち遠しい。

 

(楓屋)

 

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