SCUBA『Personality』(Hotflush / P-Vine)

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Scuba.jpg 前作から2年ぶりとなるアルバム『Personality』だが、マウント・キンビーをいち早くフック・アップするなど、潮流を読み取る慧眼に定評があるスキューバらしい内容となった。

 ベース・ミュージックを鳴らしながらも、そこに定住せずテクノに接近するなどして常に異彩を放ってきたように、彼の音楽が持つ魅力はクロスオーヴァー性である。本作は、そのクロス・オーヴァー性が結実したバラエティ豊かな音楽を展開している。ベース・ミュージックはもちろんのこと、テクノ、ドラムンベース、ビッグ・ビート(まさか2012年にこの言葉を使うなんて思いもしなかった!)、エレクトロ・ハウスなどをスマートに融合している。特にエレクトロ・ハウスが重要な役割を担っているのは、ベース・ミュージックがハウスとの繋がりを強めたことによって、ハウスがイギリスのダンス・ミュージック・シーンで最前線に返り咲き、注目を集めていることと無関係ではないだろう。

 このハウスについてもう少し言及すると、ベース・ミュージックだけでなく、昨今のビート・ミュージックやアイタルといったインディーなど、いま注目を集めている音楽のほとんどに、ハウスの影が見え隠れする。それはおそらく、様々な音楽性を掛け合わせることが当たりまえとなったポスト・インターネット世代が、自らの頭にある音楽を鳴らすフォーマットとして、ハウスの利便性が注目されたことによるものだと思う。ハウスのイーヴン・キックは、マゾヒスティックな快楽をもたらす抑制的ビートではあるものの、その実、高い順応性を備えている。つまり、ポスト・インターネット世代の音楽的特徴である"何でもあり"とハウスの順応性は矛盾するものではなく、出会うべくして出会ったと言える。この出会いが、インディーからハウスの更新がなされた要因であり、その影響は日々拡大している。今はまだ、ベース・ミュージックにおけるハウスと、インディーにおけるハウスは交わっていないが、そう遠くないうちに、お互い流入しあう関係になるのではないだろうか?

 そして、その流入を促すようなスピード感が、本作にはある。本作を聴いて、スキューバの持ち味であった複雑なリズムが直線的になったことを嘆く人もいるだろう。しかし、直線的になったことでスピード感が生まれたことも事実であり、このスピード感は、凄まじい速さで溶解が進む現在の音楽シーンを如実に表している。イギリスでは、フレンドリー・ファイアーズとマンチェスターのステイ・ポジティブが頻繁に交流するなど(両者はイベントなどでよく一緒になっている)、先述の流入しあう関係の兆候が窺える。本作も、こうした兆候のひとつだと思う。

 

(近藤真弥)

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