ザ・ヴァクシーンズ

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THE VACCINES

僕らが過去のカルチャーに対して
リスペクトの精神を持っているのは確かだね


2回のキャンセルを経てようやく単独での来日公演が実現したイギリスのギター・バンド代表、ヴァクシーンズ(こういうフレーズは彼ら自身嫌いそうだけど、あえて)。

勢いとビッグ・マウスだけでデビューしてさっさと消えてしまうようなそこらのバンドたちとは違い、ヴァクシーンズには新人離れした風格と歴史上の優れた音楽に対する丁寧な目配せがある。そしてそれらをアーティーに表現してしまうのではなく、究極にシンプルかつモダンなポップ・ソングにしてしまうあたり、ほんとうに何年にひとつの素晴らしいバンドだと思う。今回は東京でのライヴ前日にギタリストのフレディー・コーワン(ホラーズのメンバーの弟。アップリフティングでクラシカルな音色のギターを弾く)とベーシストのアーニー・ヒョーパーに話を訊いた。

インタヴューのときに改めて気付いたんだけど、ヴァクシーンズってとってもグッド・ルッキングなバンドだね!

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all photos by Mitch Ikeda

まずは...日本に戻ってきてくれてありがとう! 単独公演も1回目は震災の影響で、2回目はジャスティンの喉にドクター・ストップがかかって中止になってしまいましたが、ようやく3度目の正直で今回無事に単独公演が開催できることになりました。2回もキャンセルになるとだいたいそのまま流れてしまうことが多いんだけど。

フレディー・コーワン(以下F):僕らのほうこそ日本に戻ってこられて嬉しいよ! 最近はずっとイギリスにいたから、ちょっと退屈していたんだ。イギリスと日本はカルチャーに対する尊敬の気持ちがあるという点ですごく似ていると思うから、僕自身日本に来た時はとても親近感を感じているよ。

去年のフジロックは良い思い出になりましたか? さっき入口のところでマネージャーが「フジロックのときはメンバーも疲れていたから、明日はもっと良いステージになる」(インタヴューが行われたのは東京公演の前日)とわたしに話していましたが...。

F:フジロックは会場に霧が立ち込めていたり、オーディエンスの服装がとてもカラフルだったり、ステージが山に囲まれていたりして、まったく別の惑星にいるような気持ちだったね。もちろんスケジュールもホットだったけど(笑)。それでそのときは東京での時間をぜんぜん取れなくてすこしイライラしてしまったのかもしれないな。ずっと東京に行くことが夢だったから。

フジロックでのステージは文句なしに素晴らしくて、もちろんメンバーが疲れているなんて微塵も気付きませんでしたが、僕も一緒に曲を大合唱していて、やっぱりヴァクシーンズにはカルチャーがあるなあ、と思いました。それが他の平凡なギター・バンドとの一番の違いだとも思います。

F:政治家が国の歴史を知っていなければならないように、ミュージシャンは音楽の歴史を知っているべきだと思う。

アーニー・ヒョーパー(以下A):文脈が大事なんだ。

F:そう、その知識が僕たちの文脈に組み込まれるんだ。たとえばパンク・ロックを知るならロックンロールを知っている必要がある。セックス・ピストルズを理解するなら、ジーン・ヴィンセントやゲイリー・グリッターやスウィートや、そういう過去を紐とく必要があるし、そのうえで初めてセックス・ピストルズとロックンロールの類似点を理解できるよね。セックス・ピストルズ単体では何もリンクしない。だから僕らが過去のカルチャーに対してリスペクトの精神を持っているのは確かだね。ただそれも別に使命を持ってやっているわけじゃなくて、ただ単純に音楽が好きだからやっているに過ぎないんだ。

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あなたたちのファッションもトラディショナルな要素がたぶんに含まれていて素晴らしいですよね。

F:いや、50年代の人たちのほうがぜんぜんクールだと思うよ(笑)。ファッショナブルでデンジャラスな雰囲気はいまよりもあったと思うし、そういうのがただ個人的に好きなんだ。

日本では邦楽と洋楽を聴く人たちというのがきっぱり分かれてしまっていて、僕のまわりにいる洋楽をまったく聴かない人たちは「歌詞が分からないし、共感できないから聴かない」と言います。でも僕はヴァクシーンズのリリックだったらどこの国の人でもシンパシーを感じるはずだと思うんです。

F:歌詞を書いているのはジャスティンだから、あくまで第三者としての意見になってしまうけれど、たしかに彼の書く歌詞は世界共通で共感を呼ぶものだと思うよ。とくに同世代でなくても、リスナー自身が自分に対して正直になることさえできれば、自然とシンパシーを感じるんじゃないかな。心のうちに隠していることやじつは不安に思っていること、野望も、希望も、すべてをジャスティンは正直に書いていると思う。

いまはツアーをしながら新曲を書いているんですか?

A:そうだね。日本から帰ったらすぐにレコーディングの作業が待っているから、いまはそのことばかり考えているよ。去年は"いかに良いライヴ・バンドになるか"ということに集中して過ごした一年だったけど、最近だとメルボルンでオフがあったから新曲を書いてスタジオでレコーディングもしたよ。

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もちろん明日のセットリストには新曲も?

A:うん! 2曲演奏する予定だよ。次のアルバム用に12曲くらいは書く予定だけど...。とりあえず明日披露するのは2曲だね。

商業的に成功しているかはさておき、個人的にはここ1、2年で良いギター・バンドがたくさん出てきたように感じます。シャークス、トライブス、君たちの東京公演で前座を務めるハウラーも、みんな本当にキャッチ―でグレイトなポップ・ソングを書きますよね。それってあなたたちがデビューしてからの流れだとも思うんですが、新作では今まで通りのギターサウンドを貫き通す予定ですか? あるいは別のジャンルへの興味もあれば教えてください。

F:実を言うと、進化はするけどジャンルを拡げるわけじゃない。ファースト・アルバムにはとてもシンプルでパワーのあるポップ・ソングが収録されていたと思うし、次のアルバムでも同じような、グッド・メロディーでシンプルで、という基礎はしっかり持ちつつ、そのうえに別の要素を加えていくっていう感じかな。土台があるからこそ実験ができると思うんだよね。

いまも名前を出しましたが明日の前座はアメリカ注目のニュー・バンド、ハウラーが務めます。ヨーロッパでのいくつかのツアーも一緒にまわっていたりして、彼らのようなバンドとはとても気が合いそうですよね。

F:ハウラーとまわったツアーが一番楽しかったよ。彼らはまずライヴ・バンドとして最高なんだ!

ハウラーもそうですが、アーケイド・ファイアともツアーをまわっていましたし、あなたたちはとてもイギリスっぽいバンドでありながら(その国のカルチャーを感じるという意味で)、アメリカのバンドともお互い共鳴しているのが興味深いと思いました。

F:個人的に好きなバンドもアメリカのバンドのほうが多いと思う。ただギタリストとしてはスミスなんかのクリーンな音色にすごく惹かれるから、その影響がサウンドにも表れていてバンドのイギリスっぽさにも繋がっているんだと思う。

A:僕も好きなバンドはアメリカのほうが多いね。イギリスはジメジメしているし、それに比べてアメリカのバンドには邪悪さとかパワーがあると思う。イギリスだと「あいつに復讐したい」「学校で嫌いなやつがいるからぶっ殺したい」とかさ(笑)。アメリカのほうがカラッとしている気がするね。

では最後の質問です。ヴァクシーンズにはタイムレスな魅力があると思います。そこで30年後の、ヴァクシーンズを知らないティーンにバンドのことを説明するとしたら、あなたは何と説明しますか?

F:うーん、難しいね。30年後にもし世界がまともに機能していたとしたら(笑)、僕たちの音楽は意味のあるものとして残っていると思うね。だから「筋が通っている音楽」っていう風に説明するかな。でも全員海のなかに沈んでいるのかもしれないしね。未来のことは誰にも分からないよ(笑)。

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 最後のコメントなんか、とてもイギリスのバンドらしいと思いました。けっしてトレンドなんかには目もくれないけれど、インタヴューが終わったあとの雑談では「グループラブは良いバンドだ」と他のバンドのことも褒めるなど、寛容さもあって人間臭くて良いバンドだな、と改めて思いました。

2012年2月
取材、文/長畑宏明

編集部注:筆者による、インタヴュー翌日東京公演のライヴ・レポは、こちら! そして2011年初頭におこなわれた、フレディーとのインタヴューをもとにした記事は、こちらに!

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