NINA KRAVIZ『Nina Kraviz』(Rekids)

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Nina Kraviz『Nina Kraviz』.jpg ロシアの美人DJ / プロデューサーであるニーナ・クラヴィッツ。その彼女がマット・エドワーズ(レディオスレイヴ)主宰のレーベル《Rekids》から、待望のファースト・アルバム『Nina Kraviz』をリリースした。ニーナはDJとアーティスト活動はまったくの別と考えていて、確かに本作は、DJプレイとは違いタイトで統一感を重視したアルバムとなっている。

 ちなみにニーナのDJプレイはバラエティに富んだ選曲が特徴で、"クラシック"と呼ばれる過去のテクノやハウスにリスペクトを表しながらも、ピンク・フロイド「On The Run」といった楽曲までプレイするなど、音楽そのものに対する愛情を感じさせてくれる。ニーナ自身アシッド・ハウスを多くプレイすると公言しているが、そんなニーナのインスピレーション源はデヴィッド・ボウイにグレイス・ジョーンズ、さらにはロバート・プラントやケイト・ブッシュといった面々で、特にケイト・ブッシュからは多大な影響を受けたらしい。ニーナが名を挙げたアーティストからもわかるように、ニーナは音楽に対し寛容な姿勢で接していることが窺いしれる。

 それだけに、本作を聴けば聴くほど、もっと多彩な音楽性を披露できたのではないか? と思わざるをえない。本作はリード・トラック「Ghetto Kraviz」のような、妖しいミニマル・サウンドとシンプルなプロダクションを施した曲がほとんどだ。陶酔的な"ハマる"ダンス・トラックは心地良く、薄暗い地下室で狂喜乱舞する人々を想像させる雰囲気もあるが、豊富な引きだしと端正なルックス、そして囁くような魅力的歌声を持つニーナを"フロアのクイーン"にとどめるのは、あまりにもったいない。ニーナの持つ資質からすれば、ポップ・フィールドとアンダーグラウンドを繋ぐ外交官になりえると思う。例えば、ニーナが自身の作品で多様なポップ・センスを開花させ、それに釣られた聴き手をニーナがDJでリデザインするような光景。そんな光景を実現させるだけのポテンシャルを、ニーナは持っている。

 良くも悪くも、聴き手が"自分の求めるバンド / アーティスト"を見つけやすくなったいま、ハプニング的発見は少なくなった。こうした現状は、"深さ"を育むことはあっても、"視野の広さ"は育たない。この"視野の広さ"が欠けた現状として、"箱庭での交流"は至るところで発生しているが、その交流が箱庭を飛びだし、別の箱庭と交流して新たな摩擦を生むことは難しくなっている。そんな現状のオルタナティヴとして、ニーナは重要な存在になれる可能性を本作は示していると思うのだが、どうだろう?

 

(近藤真弥)

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