HOWLER『America Give Up』(Rough Trade / Hostess)

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Howler 『America Give Up』.jpg まずは「I Told You Once」のPVをチェックしてみてください。ダサいダンサーの前で歌うヴォーカルをにやにやしながら眺めるほかのメンバーの姿が所々に差しこまれる、何ともシュールでアメリカらしい映像なので。音はフォークっぽい感触もありながら、2000年代のギターロックの影響を良い具合に感じさせて、爽快という言葉がとてもよく似合う。

  東京のライヴで共演したヴァクシーンズとは同じギター・ミュージックでも対極にあるバンドかもしれない。そして2011年がヴァクシーンズなら、2012年はハウラーと言えるくらいの逸材だ。やさぐれた風を装いながら清涼感が勝ってしまうヴォーカルがとても青春っぽくて素晴らしいし(ときにストロークスのジュリアンのようなかすれ方をするのも好きだ)、ギターの響きはノスタルジックで曲に奥行きを与えている。「Back To The Grave」や「America」「Back Of Your Neck」など、アルバムには名作がいくつも収録されているが、やっぱり新録版の「I Told You Once」が楽曲として圧倒的な完成度だ。なんちゅうええ曲。

 彼らを「ハイプ」と一蹴したやつらは小難しい音楽ばかり聴きすぎてシンプルでストレートな魅力に不感症になってしまったか、おそろしくセンスがなくてそれに無自覚なのか、そのどちらかだ。こういうバンドもいまのアメリカには少ない。古き良きオーセンティックなロックを奏でるウィルコみたいな国宝級のバンドは豊富にいるけれど、彼らくらいフレッシュで向う見ずなバンドが登場して、予想通り海を越えたところでNMEが大プッシュして、みたいな状況はじつに微笑ましい(NMEはそれだけで存在意義あると思うけどな)。こういうバンドがデビュー盤を出すと必ず取り上げて絶賛したくなるので、やっぱり書きました。彼ら、ライヴだとスタジオ盤の何倍も良いですよ。

 

(長畑宏明)

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