BROKEN FINGERS『BF Juke 4』(Self Released)

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Broken Fingers『BF Juke 4』.jpg 現在のジュークを考えてみると、ルーツであるハウスと似た経緯を辿っていて面白い。もともとハウスも"踊るための音楽"として生まれた音楽だが、クラウドにマゾヒスティックな興奮を与えてくれるハウスは、アンダーグラウンドからポップ・フィールドにオーヴァーグラウンドする過程で細分化し、"踊る"だけでなく"聴く"ことも要求されるようになった。

 そしてジュークも、《Planet Mu》の精力的なリリースやサウンドクラウドを通じて多くの人に触れることで、"聴くトラック"が増えてきているように感じる。とはいえ、ジュークの場合は求められたからではなく、聴いた人たちがその音楽性を面白がり、自ら試行錯誤し曲を作った結果として"聴くトラック"が増えたのだと思う。その"聴くトラック"を興味深い形で表現しているのが、ブロークン・フィンガーズである。

 このブロークン・フィンガーズ、筆者なりにいろいろ調べてみたが、どんな人物なのかハッキリとしない。フェイスブックのプロフを見たかぎりでは、ショーンなる青年によるソロ・プロジェクトだと推察できるが、それ以外は詳細不明というミステリアスな感じ。もしかしたら、『The Deducer』のジャケに写っている白人男性がブロークン・フィンガーズなのかもしれない。

 そしてもっとも興味深いのは、ブロークン・フィンガーズはジューク一筋で曲を作ってきた人ではないということ。彼のバンドキャンプにアップされている音源を聴けばわかるが、サウンド・プロダクションはポスト・パンク的であり、ナイン・インチ・ネイルズに影響を受けたインダストリアル・ノイズな質感を残している。この不気味で殺伐とした質感は、ヒップホップやウィッチ・ハウスなど様々な音楽を作ってきた彼の全作品に共通するもので、それは本作も例外ではない。本作を注意深く聴けば、音に対する偏狂的こだわりに驚くはずだ。ベースが過剰に強調され、徹底的に削ぎおとされたミニマル・サウンドで、聴き手を深淵に引きずりこむような音楽。それはシカゴ産のジュークとは明らかに異なるものであり、そんなトラックを生みだすブロークン・フィンガーズは、ジューク界からすると門外漢かもしれない。

 しかし、だからこそ本作には、ジュークに収まらない多様な音楽性が詰まっている。ジュークはもちろんのこと、ミニマル・テクノにドローン、そして先述のポスト・パンクやインダストリアル・ノイズといった要素が混沌と渦巻いている本作は、ブロークン・フィンガーズという音フェチとジュークが出会った、素晴らしいハプニングのようなものだ。

 

(近藤真弥)

 

※本作は、ブロークン・フィンガーズのバンドキャンプでダウンロードできる。

 

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