22-20s『Got It If You Want It』(Yoshimoto R&C)

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22-20s.jpg 前作『Shake / Shiver / Moan』から約2年、22-20sの3rdアルバム『Got It If You Want It』が届いた。プレイヤーの再生ボタンを押すと、「Bring It Home」の力強いギター・リフが鳴り始める。マーティンの歌声はクールなのにエモーショナル。最高にカッコいい! だけど...こんなふうに22-20sの音楽を聞いているとき、彼らのことを思い浮かべているとき、僕はやはりバンドの「解散」について色々と考えてしまう。当たり前のように3rdアルバムがリリースされたことが、今でもどこか信じられない。彼らは、たった1枚のアルバムを残して、音楽シーンから消えていても不思議じゃなかった。

 いま、この瞬間にも世界のどこかで数え切れないほどのバンドが結成されているのだろう。「カッコいいバンド名を考えなくちゃ」「ギターとベースは決まったけど、ドラムは誰にする?」「とりあえず、スタジオは予約しといたよ!」学校の帰り道や深夜のファミレスで、そんな会話が交わされているに違いない。あるいは、散らかったベッド・ルームでパソコンを立ち上げながら。でも、その一方で同じくらいの数のバンドが消えて行くことも想像できる。有名も無名も関係ない。メジャーもインディーも関係ない。キャリアの長さも関係ない。どんなに素晴らしい音楽を鳴らしていても(そうじゃなくても)、"その時"が来たらバンドは終わってしまう。わかっているけれど、胸が締め付けられる思いだ。ひとりの音楽ファンとして、何度もその事実に打ちのめされてきた。そして僕はたった一度だけ、バンドのメンバーとしても「解散」を経験したことがある。

 僕は10代後半から30代までのほぼすべてをバンド活動に費やした。音楽で食べていくことはできなくても、ずっと続けていくことに疑いはなかった。メンバー探しもせずに、近所に住んでいた友達と組んだバンド。音楽仲間である以前に、幼馴染みで親友だった。何度が巡ってきたチャンス(レーベルからの誘いやイベント出演etc.)は、持ち前のパンク魂で台無しにすることを良しとしていた。DIY精神を拡大解釈していたから。結局、10年以上続けてもライヴでの動員は増えず、スタジオ練習やライヴの調整が面倒になってきた。新曲を書いても、なかなかうまくまとまらない。僕自身を含めて、就職だとか結婚だとか「当たり前の日常」がバンド活動を圧迫し始めた。よくある話だ。自分たちだけが特別だと思っていた。少なくとも、音楽を鳴らしているときだけは、そうだと信じていた。そんなある日、ドラマーと連絡が取れなくなった。家を知っていたから押し掛けて呼び出すこともできたけれど、他のメンバーが「それは、やめとこうぜ」と言う。「俺たちも同じ気持ちだから」。

 トーキング・ヘッズもオアシスもホワイト・ストライプスもR.E.M.も解散した。自分のバンドまでも解散させちまった。それでも、僕は何ひとつ失望なんてしていない。もしも音楽と出会っていなかったら? もしも音楽をこんなに好きになっていなかったら?

 金銭目的でもメンバー同士のあれこれでもなく、22-20sは自然の成り行きのように再結成した。復活後の2作目となる『Got It If You Want It』では、前作で少しだけ距離を置いた「ブルース」という自分たちの原点へと立ち返っている。インタビューでマーティンが「意味はない。」なんて嘯いているけれど、スリム・ハーポからストーンズ、そして22-20sへと引き継がれた"手に入れろ"という強い思いは明確だ。僕はインタビューのまとめに、彼らは「"It=ブルース"を取り戻した」と書いた。そして、アルバムを何度も聞いているうちに「ブルースという音楽そのものが、彼らを捉えてしまった」のかもしれないとも思うようなった。再結成が必然だとしたら、ブルースと向き合うことからは逃れようもない。

 「Pocketful Of Fire」ではラウドなリフが執拗にうねる。60年代のブルース/サイケデリック・ロックをモダンに解釈した「White Lines」と「Only Way You Know」でのマーティンの歌声は、ジム・モリスンを彷彿とさせる。「Purple Heart」と「Cuts And Bruises」は、2ndアルバムのフィーリングをさらに発展させたようなメジャー・キーの名曲。アコギとエレクトリック・ピアノがダークで美しいレイヤーを描く「A Good Thing」は、彼らの新境地とも言えるだろう。展開のないリフで押し切る「Little Soldiers」には耳を奪われる。かすかに聞こえるハンド・クラップの揺らぎとドラッグに言及した《もう悲しみは感じない、苦しみも感じない/罪から解き放たれ、恥からも解き放たれ/この頭の中を、小さな白い兵士達が駆け巡ってる》というコーラスが不穏だ。

 もしもブルースと出会っていなかったら? ―22-20sへのインタビューで、そう聞くのを忘れていた。けれども、このアルバムこそが答えなのだと思う。「そんな生き方は、想像もできない」。

 

(犬飼一郎)

 

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