ザ・ヴァクシーンズ at 恵比寿LIQUIDROOM 2012.2.15

 ライヴレポとはライヴが終わってすぐに書かれるべきものなので、ライヴから2週間以上経って書かれたこれはライヴレポではない。回顧録みたいなものだ(編注:と筆者は言ってますが、紙媒体の場合、ライヴから1ヶ月くらいたってから書いたものも充分レポとして成立する。まあ、これはウェブ媒体ですしね...!)。

 ヴァクシーンズとは勢いだけで青春時代を駆け抜けるような瑞々しいラッド・バンドではなく、80年代ニュー・ウェイヴからブリット・ポップまでの由緒正しき文脈を持つ正統派のポップ・バンドである。フジロックとあわせて彼らのライヴはまだ2回しか観ていないが、そのステージはとても堅実で波がなく、まるで何年もツアーをやってきたバンドのような安定感がある。

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 カイザー・チーフスのようにヴォーカルが盛り上げ上手というわけではなく(むしろ学校では先生に「お前さあ、すこしは積極的になれよ」と言われそうな口下手だ)、コールドプレイのようにアンセミックなシングル曲のイントロで観客を沸かせるわけでもない。ヴァクシーンズはライヴの前半から「Wreckin' Bar」や「A Lack Of Understanding」などのシングル曲を連発する。2012年のベストシングルのうちのひとつに数えられる「Post Break-up Sex」ですら、とくに溜めも作らずスタジオ盤よりすこし早めのBRMですんなり演り終えてしまうのだ。ファスト・ナンバー以外の曲では(それらの曲たちこそが彼らにとっての財産だ)、オーディエンスもしんみり聴いているような印象すらある。なんだか陰気くさいイギリスのパブのような雰囲気だ。だが、それも含めてわたしはこのバンドに愛着がある。

 新曲も2曲披露したが、極限のシンプルさを貫き通したファーストよりは遊びのある構成を持たせた、しかし相変わらず「Teenage Kicks」ばりのグッド・メロディーだった。何も変わっていない。メンバーのうちの1人が兄弟同士であるホラーズとは違って、彼らは音楽的進化を最優先にしない。好きなものが簡単に左右されないからこそ辿りつける境地だと思うが、それも考えると尚更近年のニュー・バンドとは思えない。1人50歳くらいの奴が紛れているんじゃないか。

 この日のライヴが盛り上がっていたかと訊かれると、「最高に盛り上がって、みんなシンガロングしまくりで、歴史が変わったみたいだ」とは答えられない。みんなそれぞれのスタイルで観ていたと思うし、わたしは曲に入り込み過ぎてすこし感傷的になっていた。最後はお決まりの大傑作ショート・ナンバー「Norgaard」で潔く終了。これでお前らのクソみたいな日常賛歌は終わりだ、と言わんばかりに。オアシスとはまったく違ったスタンスだが、彼らもまた民衆のためのバンドだ。わたしがインタヴューで「ほかのジャンルに興味はある? 新作はファーストとは変わるの?」と訊いたときに、彼らが「いや、基本は何も変わってないよ」と即座に答えたことを思い出した。音楽があるから生きていけるという想いを強くするのは、彼らのようなバンドに出会ったときだ。

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