NZCA / LINES『Nzca / Lines』(Loaf / Melting Bot)

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Nzca.jpg 元メトロノミーのガブリエルも参加するユア・トゥエンティーズのメンバー、マイケル・ラベットのソロ・プロジェクトであるナスカラインズ。そのナスカラインズのファースト・アルバム『Nzca / Lines』なんだけど、すごく面白い。音源をいただいてから何度も聴いているが、ふと思いだして聴きたくなるスルメアルバムだ。

 全編浮遊感が心地良いエレ・ポップで、ディスコやエレクトロといった音楽をモダンに仕上げた所謂レトロ・フューチャリスティックな方法論で作られているが、そんな一言で括るにはもったいない魅力が本作には存在する。プロモ資料には"インディーR&B"なんて言葉も出てくるし、イントロが鳴った瞬間クラフトワークの「Tour De France」を想起してしまう「Compass Points」みたいな曲もある。他にも古き良きIDMやファンク、アンビエント、そしてもっとも面白かった頃のチルウェイヴ、つまり、リバーブの奥に潜む多様な音楽性が魑魅魍魎と美しく渦巻いていた頃のチルウェイヴ。そういう意味では、"チルウェイヴ以降のエレ・ポップ"として語ることもできるだろう。

 だがアルバムを通して聴くと、そんな単一的ジャンル分けはどんどん無効になっていくことがわかるはず。様々な要素が複雑に絡み合いながらも、あくまで音数が少ないシンプルかつ精巧なポップ・ソング集として聴き手の心を刺激してくれる。だから特定のバンドやアーティストを挙げて例えるのは難しいが、実験精神とインテリジェンスを感じさせるサウンド、そしてファルセットが特徴的な美声という点ではホット・チップと共通するかもしれない。

 "どこか聴いたことあるようで今までなかった音楽"にはそうそう巡りあえるものではないが、本作は間違いなく"ありそうでなかった音楽"だ。あらゆるものから切りはなされた空間で鳴るミステリアスな音楽。それが『Nzca / Lines』である。

 

(近藤真弥)

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