NEW AGE STEPPERS『Love Forever』(On-U / Beat)

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NEW AGE STEPPERS.jpg ニュー・エイジ・ステッパーズの4thアルバム『Love Forever』がリリースされた! 3rdアルバム『ファウンデーション・ステッパーズ』から約30年。まさかの復活だ。レゲエ / ダブにパンクを融合させたこのプロジェクトの中心であり、プロデュースを担うのは、もちろんON-Uサウンドの総帥エイドリアン・シャーウッドとスリッツのアリ・アップ。嬉しい驚きに胸がいっぱいになる反面、悲しくて大きな事実がひとつ。みんなが知っているとおり、アリはこのアルバムのリリースを待たずに一昨年、乳がんで亡くなってしまった。ニュー・エイジ・ステッパーズとしては、これがラスト・アルバムになるのだろう。そして、ライヴでのアリのパフォーマンスを見る機会も永遠に失われてしまった。けれども、このアルバムを聞いていると、そんなことが嘘みたい。しなやかで優しく、時に挑みかかるようなアリの歌声は、"生命力"そのものだから。

 僕が最初にレゲエに出会ったのは、ローリング・ストーンズの『ダーティ・ワーク』に収録されている「Too Rude」だった。ポップ・ミュージック / ロックの楽しさに目覚めて間もない頃、ストーンズが『ダーティ・ワーク』をリリースした。当時のストーンズはミックとキースの不仲が囁かれていて、バンドも空中分解寸前だったらしい。なるほど、いま聞き返してみてもアルバムは散漫な印象で、ストーンズのディスコグラフィーの中でも注目される作品じゃないかもしれない。それでも当時は、ストーンズの"新作"という意義がとてつもなく大きかった。14歳だった僕は、何度も何度も夢中で繰り返し聞いた。『ダーティ・ワーク』の中で、いちばんのお気に入りになったのが「Too Rude」。ゆったりとしたリズムで意地悪な女の子のことを歌うキース。脱力したヴォーカルとリヴァーヴが強めにかかったアレンジが不思議で、僕にはとてもポップに聞こえた。その曲がカヴァーだってことには気付いたけれども、"レゲエ"だなんてわかってなかった。ただ単純に「良い曲だな。キース、最高!」って思っていただけ。それはある意味、今も変わらない。

 やがて僕はパンクの洗礼を受けて、クラッシュの1stアルバムに辿り着く。"ポリスとコソ泥"っていうナイスな邦題の「Police And Thieves」は最高にカッコいいレゲエ・ナンバーだ。リー・ペリーとジュニア・マーヴィンのカヴァーであるこの曲をリー・ペリーがボブ・マーリィに聞かせたのは有名な話。セックス・ピストルズの「勝手にしやがれ!(Never Mind The Bollocks)」にすぐに飽きてしまった僕は、P.I.L.の『Public Image』を手に入れた。ジャー・ウォブルの極太ベースとキース・レヴィンの鋭利なカッティングが飛び交う隙き間だらけのサウンドが新鮮で、ピストルズの100倍は好きになった。ピストルズの解散後、ジョン・ライドンがジャマイカへ旅していたことや初期のP.I.L.のサウンドにはレゲエ / ダブの影響が強いことを知った。ようやくレゲエが何だかわかってきたみたい。ボブ・マーリィを聞く準備ができたみたい。そして、聞いてみた。もちろん最高だった!

《New Wave, New Craze / New Wave, New Wave, New Phrase / I'm sayin' / The Wailers Will Be There / The Damned, The Jam, The Clash, Maytals Will Be There / Dr. Feelgood Too》

 ボブ・マーリィのライヴ盤『Babylon By Bus』に収録されている「Punky Reggae Party」にはこんな一節が歌い込まれている。クラッシュの「Police And Thieves」を聞いたボブからのアンサー・ソングだ。ストーンズに惚れ込まれて、パンクスと一緒にパーティを始めるレゲエという音楽。少しだけ時間を巻き戻せば、スカが軽快なビートを刻み、UKではスペシャルズやマッドネスが受け継いでいた。パーティをのぞいてみるとダブ・サウンドが壁を揺らし、ダンスホールやラヴァーズ・ロックが鳴り響いていた。ちょっと遠回りしたけれど、僕はそこでスリッツとポップ・グループを見つけた。そして、その後すぐにニュー・エイジ・ステッパーズと出会い、夢中になった。

 この新作にはマーク・スチュアートはいない。ドラムはブルース・スミスじゃないし、アスワドやクリエイション・レベルのメンバーも参加していない。けれども、彼らが名を連ねた1stアルバムを思い起こさせる。それは『Love Forever』というタイトルが、1stアルバムに収録されていたビム・シャーマン(ON-Uからアルバムをリリースしているジャマイカのレゲエ・シンガー。ニュー・エイジ・ステッパーズの2ndと3rdにも参加)のカヴァーと同じだから、というだけではないだろう。レゲエ / ダブをベースにファンク、テクノ、ヒップホップまで実に多彩なサウンドが鳴っている。エイドリアン・シャーウッドのミックスも、アリのヴォーカルも自由で楽しい。ニュー・エイジ・ステッパーズが体現しているのは、レゲエという音楽の"寛容性"だ。多くのバンドやミュージシャンが音楽性の幅を広げるためにレゲエを"取り入れる"のに対して、アリ・アップとエイドリアン・シャーウッドは、レゲエに"受け入れられた"のだと思う。まず、誰かを受け入れること。受け入れ続けること。それが『Love Forever』の意味だと気付いた。アリが伝えようとしていたメッセージは、最初から変わっていない。「レゲエって聞いたことないな」という人にこそ聞いてもらいたいアルバム。特に女の子におすすめ。ひとりでも多くの人が、この素敵な音楽と出会えますように!

 

(犬飼一郎)

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