LOOPS OF YOUR HEART『And Never Ending Lights』(Magazine / Octave Lab)

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LOOPS OF YOUR HEART『And Never Ending Lights』.jpg ザ・フィールドことアクセル・ウィルナーの新名義ループ・オブ・ユア・ハート。そのループ・オブ・ユア・ハートのファースト・アルバムが『And Never Ending Lights』である。ウィルナーは様々な音を重ねる偏狂的こだわりでもって、メロディーやフックを丁寧に配置し音楽を作りあげていくが、その基本的姿勢は本作でも変わらない。しかし、音に対するアプローチの仕方は、ザ・フィールドでのそれとは異なるものであることが本作を聴けばわかるはずだ。

 ウィルナーといえばやはりループだが、本作ではミニマル・テクノ的インパクト、例えば、聴き手をたじろがせる唐突な展開や飛び道具は皆無である。その代わり、流麗な川の流れを想起させる甘美なグルーヴが聴き手を楽しませてくれる。クラウト・ロックの反復性にドローン、そこへふと現れては消えるささやかなメロディーが主な構成要素として見受けられるが、なにより素晴らしいのは、それらの音がダイナミックかつエモーショナルに鳴らされているということだ。

 本作に収録されている曲群は、音を幾重にもオブラートで包み、そのオブラートを一枚一枚剥がしていくことでカタルシスを演出しているが、謂わばそれは、"消失→構築→開放"の繰りかえしである。そしてこの"消失→構築→開放"というサイクル(ウィルナー的に言えば、それこそループ)は、そのままウィルナーの心に直結する。つまり、このサイクルこそアクセル・ウィルナーという人間そのものを代弁している。ウィルナーは己を"消失"させることで初めて、自らを音楽として表現できる。だからこそ、彼の生みだす音楽は聴き手を欲するし、"消失"によって主を失った音楽に聴き手は、自分自身を見いだすことができるのである。

 このことは、1月28日に代官山ユニットで行われたザ・フィールドの来日公演で感じたことでもある。序盤のヒプノティックなループとジャムのように展開していくサウンドは、ザ・フィールドという存在をステージ上から消す役割を担っているように思えた。そんな音に観客は歩み寄ることを求められ、気がつくと、自分を中心として音が周回しているような錯覚に襲われる。このトリックは『Looping State Of Mind』まで一貫して導入されていたが、『And Never Ending Lights』もほぼ同様のトリックを用いている。ただ先述したように、アプローチの仕方が違うというだけだ。ほんとに素晴らしい本作の欠点を強いて挙げるとすれば、この類似性にあるだろう。つまり、アクセル・ウィルナーという才能の偉大さからすれば、本作の出来は当たり前の範疇であるということだ。まあ、そんな問題は些細なことでしかないのだが。

 

(近藤真弥)

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