LINDSTROM『Six Cups Of Rebel』(Smalltown Supersound / Calentito)

|

LINDSTROM.jpg リンドストロームの傑作シングル「I Feel Space」から7年になる。振りかえると、"コズミック・ディスコ"と呼ばれた音楽は、いま盛り上がりをみせるニュー・ディスコ / バレアリックに先鞭をつけるムーブメントだった。今でこそ"コズミック・ディスコ"の名は頻繁に聞かなくなってしまったが、チルウェイヴ以降ダンス・ミュージックにベクトルを向けている昨今のインディー・ミュージックを聴いていると、ニュー・ディスコ / バレアリックの影響、というか、ニュー・ディスコ / バレアリックそのものになりつつある現状を見ると、その背後にどうしても"コズミック・ディスコ"の影を見いだしてしまう。そして、その"コズミック・ディスコ"を世に知らしめた功労者のひとりであるリンドストロームの仕事が、現在のインディー・ミュージックに影響を与えている気がしてならない。

 彼はリミックス・ワークも盛んな人で、フランツ・フェルディナンドやLCDサウンドシステムなどをリミックスしているが、こうした繋がりが、現在のインディー・ミュージックの土台としてあると、筆者は思う。こういった例は他にもたくさんあって、例えば現在のニュー・ディスコ / バレアリックを牽引するトッド・テリエは、《Resident Advisor》誌のポッドキャストで!!!(チック・チック・チック)にM.I.A.、さらにはブルース・スプリングスティーンやザ・テンプテーションズまで織りまぜた、現在のインディー・ミュージックの特徴であるバレアリック精神を披露しているし、イギリスではシミアン・モバイル・ディスコが「2007 End Of Year Rave-Up」というミックスCDで、ホット・チップなどと一緒に先述の「I Feel Space」をピック・アップしている。

 いま挙げてきた例は2005年~2008年のことで、アイタルのような存在が出てくる現在のインディー・シーンを受け入れるための土壌が、数年前に出来ていたとも言える。

 そんななかリリースされた新作『Six Cups Of Rebel』は、実にリンドストロームらしい我が道を行くアルバムとなった。トッド・ラングレンによる「Quiet Place To Live」のリミックスを含めた全8曲が収録された本作は、リンドストローム自身「アルバム・フォーマットにフィットする楽曲を作ろうと、意図して制作に取り組んだのは、実はこれが初めてなんだ」と語るように、ひとつの壮大な物語が描かれている。収録曲は"アルバム"にこだわった構成が目立つし、「No Release」から始まり、本編ラストの「Hina」までシームレスに展開していく。そのため、曲ごとのインパクトは薄れてしまったのは否めないが、本作のコンセプトに忠実な楽曲が揃っている。また、従来のチル・アウト的側面はほぼ皆無で、フリーク・アウトした躁状態がアルバムを終始支配する。この点に関しては、評価が分かれるかもしれない。

 だが、なんでもありのバレアリック精神は至るところで発揮されていて、ディスコやブギーはもちろんのこと、プログレッシブ・ロックな「Call Me Anytime」、アシッド・ハウスをフィーチャーした「Six Cups of Rebel」、他にもハンマー・ビートやフュージョンといった要素を戦わせ、興奮に満ちた化学反応を起こしている。こうしたプロダクションの妙も光る本作は、実験的力作だ。

 

(近藤真弥)

retweet