ITAL『Hive Mind』(Planet Mu)

|

ITAL.jpg 去年はダンス・ミュージックの勢力図を塗りかえるほどの活動を見せてくれた《Planet Mu》だが、トロピクスキープ・シェリー・イン・アテネの作品をリリースするなど、インディー・シーンにおいても存在感を発揮している。そんな《Planet Mu》が、今年も注目されるであろうことを確信させるアルバムをリリースした。アイタルの『Hive Mind』である。

 アイタルは少し変わった経歴の持ち主で、ワシントンDCにてブラック・アイズなるバンドに在籍していたそうだ。ワシントンDCといえばハードコアの聖地とされているが、この原稿を書いている途中で、とあるバンドが頭をよぎった。それは、LL・クール・J「I Can't Live Without My Radio」をカヴァーした、ワールド・ドミネーション・エンタープライゼスである。ワールド・ドミネーション・エンタープライゼスによる「I Can't Live Without My Radio」は、セカンド・サマー・オブ・ラブの影響力のデカさを物語る曲とされ、ハードコア・バンドによるヒップ・ハウスとしてオールド・スクール・パーティーでよく流れる曲でもある。

 当時のバレアリック精神は音楽性にも表れていて、レディ・ガガをネタにした「Doesn't Matter(If You Love Him)」でのヴォイス・サンプル使いはジューク / フットワークを想起させるし、他にもハウスやディスコといった要素がチョップド・アンド・スクリュード(ヒップホップにおけるアメリカ南部発祥のリミックス手法)に影響を受けたようなプロダクションのもと、サイケに鳴らされている。こうした己の好奇心に忠実な雑食性は、本作ではダンス・ミュージックとして表現されてるが、そんな本作が"USインディー"として語られているのも面白い。

 そして、アイタルが本作で披露している方向性が、ジョン・タラボット『Fin』ブリアル「Kindred」にも表れているのが興味深い。これらのアーティストは出自こそ違えど、己の欲望と好奇心のまま音楽を取りこむ姿勢では共通しており、この姿勢が結果として、同一のベクトルを披露することに繋がっている。このことがジャンルの溶解を示唆するものなのか、それとももっと大きな変化、例えば音楽の捉え方そのものの変化を宣言するものなのか、それはもう少し様子を見る必要がありそうだが、本作にはその変化が行きつく先のヒントが隠されているように思う。

 

(近藤真弥)

 

retweet